2024-25シーズンの2way契約については、別の記事で最新の情報を詳しく解説しています↓
※ 2021年7月 追記
まもなく2019-20シーズンが開幕します。
今年は八村塁選手がウィザーズに加入することもあって一段と注目が集まっていますが、もう一人の日本人NBAプレイヤー渡邊雄太選手も忘れてはいけません。
そんな渡邊選手はメンフィス・グリズリーズと2way契約(ツーウェイ契約)を結びました。
渡邊選手が結んだことにより日本でも一気に広まったこの2way契約ですが、実際はどんな契約なんでしょうか?
サラリーやNBA本契約への昇格なんかも気になるところです。
ですので今回は、渡邊選手にとって勝負の2年目となる2019-20シーズン開幕前の今だからこそ、改めて学んでおきたい2way契約について解説します。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
この記事では"2way契約"という用語を詳細にではなくざっくり解説します。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"2way契約"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"2way契約"について説明していきます。
2way契約とは
そもそも2way契約とは一体どんな契約なんでしょうか?
ここでは「どんな契約か」「なぜ作られたのか」に注目して見ていきましょう。
どんな契約?
2way契約は2017年からNBAで始まった新しい契約形態です。
この2way契約を結んだ選手はざっくり言うと、「NBA選手でありGリーグ選手でもある」という状態です。
もう少し詳しく見ていきましょう。
NBAのチームと2way契約を結んだ選手は、基本的に提携するGリーグのチームで活動します。
もちろん選手の能力やチーム状況によっては初めからNBAチームに帯同することもありますが、2way契約選手の多くはGリーグが主戦場です。
2018年から2020年までの渡邊選手はNBAのメンフィス・グリズリーズと2way契約を結んでいたので、提携先であるGリーグのメンフィス・ハッスルでの活動が中心となっていました。
そしてNBAチームからコールアップ(召集)された場合にはチームと合流し、最大45日間の試合や練習に帯同できるんです。
つまりこの2way契約はNBAのチームと結ぶものですが、実際にはシーズンの大半をGリーグで活動することも多い契約形態と言えます。
また、この契約の注意点は「提携しているNBAチームからのみコールアップされる」という点です。
一般的なGリーグ選手の場合はどのNBAチームからでもコールアップを受けることができますが、2way契約選手は提携先のNBAチームしかコールアップされることが出来ない決まりになっています。
なぜ作られた?
この2way契約は何故2017年という最近になって作られたのでしょうか?
ここでは「Gリーグのサラリーや待遇」「海外リーグの台頭」という2つの要因から2way契約を紐解きます。
1. Gリーグのサラリーや待遇
Gリーグに所属する選手の多くはNBAでプレーすることを目標にしています。
しかしNBAとは違ってGリーグの収入は決して多くはありません。
2019-20シーズンの場合NBAに何度もコールアップされるような選手でない限り、多くの選手がレギュラーシーズンの5ヶ月間で$35,000(約400万円)程度の収入となっています。
さらにGリーグ選手は、宿泊先や移動手段などの待遇面でもNBA選手と比べ物になりません。
2. 海外リーグの台頭
また近年では海外プロリーグの台頭が目立ちます。
ヨーロッパは言うまでもありませんが、中国や日本でもバスケ人気に伴いトップ選手の年俸が高騰してきているんです。
Bリーグ富樫勇樹選手の1億円契約も話題になったように、海外リーグで十分なサラリーを貰いつつNBAを目指すという選手も増えています。
この2つの要因を見ると、NBAを目指す選手であってもGリーグではなく海外リーグを選びたくなるのが分かりますね。
海外に選手が流出してしまうとNBAのチームは気軽にスカウトや召集ができませんので、選手の補強の際に苦労してしまいます。
NBAはGリーグが抱えているこれらの問題を解決して選手の流出を防ぐため、2way契約という新しい契約を設けることになりました。
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- 2way契約の選手は基本Gリーグで活動
- 提携先のNBAチームに最大45日帯同できる
- 海外リーグへの流出を防ぐことが背景
契約内容やサラリー
ではそんな2way契約は具体的にどのような契約内容なのでしょうか?
ここでは「契約内容」「サラリー」に注目します。
契約内容
2way契約は主にNBA在籍4年目までの選手が対象の契約で、各チームは2way契約選手を2人まで保有できます。
契約期間は1年〜2年となっており、同じチームには合計3シーズンまで在籍することが可能です。
契約期間:1〜2年
(同一チームには合計3シーズンまで在籍可能)
サラリー
2way契約を結んだ選手のサラリーは、「NBAチームに帯同した日数」「Gリーグチームに帯同した日数」によって決められます。
〜2019-2020シーズンの場合〜
NBAチームに帯同した日
→ ルーキーミニマムサラリーの日割り
→ $5,075($898,310 / 177日)*2
Gリーグチームに帯同した日
→ 2wayスケールサラリーの日割り
→ $560($79,568 / 142日)*3
2wayスケールサラリーというのは2way契約のサラリーを決める基準額のようなもので、2017-18シーズンの$75,000から毎年3%ずつ上昇します。
2way契約選手には、上記2つの「日割りサラリー」が「それぞれのチームに帯同した日数分」だけ支払われます。
つまり2019-20シーズンの場合、「NBAチームに帯同した日数 × $5,075」+「Gリーグチームに帯同した日数 × $560」が2way契約選手のサラリーということになります。
ちなみに2way契約の保証額は$50,000が上限です。 *4 *5
渡邊雄太
渡邊選手は2018年にメンフィス・グリズリーズと2way契約を結びました。
ここでは2018年から2020年の2シーズンにおける渡邊雄太選手の契約について紹介しておきます。
2018-19シーズンのGリーグ基本給が$35,000ですので、この2way契約が目標としているサラリー面の改善は出来ているように感じますね。
一方では2018-19シーズンのNBAルーキーのミニマム契約でさえ$838,464であることを踏まえると、まだまだ改善の余地があると言えるのかもしれません。
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2020-21シーズンの2way契約
※ 2020年12月 追記
2020年12月21日、トロントラプターズは渡邊雄太選手と2way契約を締結したと発表しました。
現地報道によると今回は1年契約を結んだようです。
そんな渡邊選手が勝ち取った2020-21シーズンの2way契約。
新型コロナウイルスの影響でこれまでの2way契約とは少し内容が変わっていますので、変更点をざっくりと紹介しておきたいと思います。
1. 帯同可能日数
- 通常:45日間(練習日もカウント)
- 2020-21:50試合(練習日はカウントしない)
2. サラリー
- 通常:日割りサラリー × 帯同日数
- 2020-21:最大$500,000
まずはNBAチームに帯同可能な日数が45日間から50試合に変更されました。
ポイントは50日間ではなく50試合というところ。
通常であれば練習に帯同した日も1日としてカウントされますが、2020-21シーズンには練習や移動の日はカウントされません。
これは新型コロナウイルス感染防止対策の影響で、例年のようにNBAチームとGリーグチームとを行き来することが難しくなることへの配慮です。
さらに2020-21シーズンは2way契約のサラリーもガラッと変わります。
先ほど紹介した通り、通常は各チームに帯同した日数分のサラリーが日割りで支払われることになっていました。
しかし2020-21シーズンは、NBAチームに帯同した日数に関係なく最大$500,000がサラリーとして支払われるそうです。
これらの変更は2way契約を結んだ選手にとって非常に大きいですね。
なので渡邊選手も状況次第では昨シーズンより多くの時間をNBAチームで過ごせることになるのかもしれません。
※ 2021年3月 追記
2021年3月、NBAの理事会は2020-21シーズンにおける2way契約の内容修正を承認しました。
今回承認された変更点は以下の通りです。
- 帯同可能日数: 50試合 → 制限なし
- プレーオフ: ベンチ入り不可 → ベンチ入り可
- サラリー: 最大$500,000 → ミニマムサラリー
まず最大の特徴は試合数の制限が撤廃された点です。
これによって渡邊選手はシーズン終了までチームに帯同可能となり、日本人選手初のプレーオフ出場も現実味を帯びてきました。
ただ逆に言うと2way契約を本契約に切り替える必要が無くなったわけですから、渡邊選手が2020-21シーズンに本契約を結ぶ可能性は極めて低くなったとも考えられます。
これについて渡邊選手自身はインタビューで「このまま(2way契約でも)試合に出てしっかりと活躍していれば、来シーズンの本契約は勝ち取れると思うから気にしていない」と発言しています。
そしてサラリーについても今回の変更で更に増加することとなりました。
渡邊選手の場合、50試合を超えた試合ではNBA3年目選手のミニマムサラリーが支払われます。
※ 2021年4月 追記
2021年4月19日、トロントラプターズは渡邊雄太選手とNBA本契約を結んだことを発表しました。
先述の通り2021-22シーズンは2way契約選手の試合数制限が撤廃されており、このままの契約でもチームは渡邊選手をシーズン終了まで起用し続けることが可能でした。
そんな中でNBA契約を結んだということですので、渡邊選手に対するチームの評価を感じることが出来ます。
渡邊選手がこれまでNBAで結んできた契約については別の記事で解説していますので、こちらも合わせてご覧下さい。
2021-22シーズンの2way契約
※ 2021年7月 追記
2021年7月、NBAは2021-22シーズンのロスターに関する規定を発表しました。
その中には2way契約についてのルールも記されていますので、ざっくりと紹介しておきます。
- 帯同可能日数: 50試合(練習は日数制限なし)
- サラリー: ミニマムサラリーの50%
試合の出場可能日数に関しては2020-21シーズン開始時に定められた「50試合出場可能」に戻されました。
その時と同じく、練習やミーティングなどには日数制限なく参加可能です。
サラリーについては一律でルーキーミニマムサラリーの50%に変更されています。
2021-22シーズンの場合だと約$450,000ほどです。
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- 契約期間は1〜2年
- サラリーはチーム帯同日数によって決まる
- NBAチームではルーキーミニマムサラリー
- Gリーグチームでは2wayスケールサラリー
- 保証は上限$50,000
- 2020-21からいくつか変更点も
実際どうなの?
ここまで2way契約をざっくりと見てきましたが、実際のところNBAではどのように機能しているのでしょうか?
「チームから見た2way契約」「選手から見た2way契約」というポイントで2way契約を紐解いていきましょう。
チームから見た2way契約
NBAチームにとって2way契約は非常に使い勝手の良い契約です。
ここではその理由を2つ紹介します。
1. ロスター枠を2人増やせる
NBAのチームは選手を15人までロスターに登録できますが、その15人とは別枠で2人の2way契約選手を保有することができます。
つまり純粋にチームの選手層を2人分追加出来るということなんです。
2. チームサラリーに計上されない
2way契約選手のサラリーはチームサラリーとして計上されないんです。
つまり2way契約選手の分のキャップスペースを空けたり、例外条項を使用する必要がないという訳なんですね。
このようにチームは大きなリスクを背負わずに若手選手と契約することができるので、非常に使い勝手が良い契約になっていることが分かります。
選手から見た2way契約
チームにとって使い勝手の良い契約だということは分かりました。
ではその一方で2way契約を結んだ選手自身にはどのように作用するのでしょう?
選手から見た「メリット」「デメリット」に注目していて2way契約を紐解きます。
・メリット
1. NBAでの実践経験を積める
NBAでの活躍を目指す選手にとって実際のNBAで試合できるということは、これ以上ない経験です。
NBA選手との試合で自分をアピールすることが今後のNBA本契約にも直結していきます。
2. Gリーグ選手よりも高サラリー
先ほども確認したように、2way契約とはいえGリーグの選手に比べると十分なサラリーをもらえます。
しっかりとした収入を確保した上で、NBAに挑戦できるというのは選手にとって非常に大きなポイントです。
・デメリット
1. コールアップは契約したNBAチームのみ
先述の通りGリーグ選手はどのNBAチームでもコールアップすることが出来ますが、2way契約選手には契約を結んだNBAチームしかコールアップできません。
つまり他のNBAチームならコールアップされるような活躍をしても、契約したNBAチームの状況によっては全くコールアップされない場合があるんです。
2way契約下の選手は、NBAプレーオフのロスターには登録することができません。
インアクティブリストには入ることができるのでチームに帯同したり練習に参加することは可能ですが、実際にベンチ入りすることは出来ないんです。
2way契約選手は基本的にGリーグで活動していますので、NBAチームからコールアップされた場合にはその都度チームに合流することになります。
移動を考慮してホームでの試合を中心にコールアップするという場合もありますが、当然アウェーの会場までチームとは別で移動しなければいけない場合もあるわけです。
さらに言うとコールアップされるタイミングはNBAチーム次第です。
ほとんどの場合は急なコールアップですので、2つのリーグを掛け持ちしているような状態にもなり得るんですね。
このような現状から「2way契約は不公平な契約だ」という主張をする専門家もいます。
さすがにそれは言い過ぎだと思いますが...。
何はともあれこの2way契約というものがNBA本契約への足がかりとなることは紛れもない事実です。
次の項では「2way契約からNBA本契約への道のり」もみていきましょう。
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2way契約のその後
ここまで2way契約を様々な面から紹介してきました。
ではそんな2way契約を結んだ選手はどのようにNBA本契約を勝ち取っていくのでしょうか?
「NBA本契約への道のり」「実際に本契約を結んだ選手」に注目して確認していきます。
NBA本契約への道のり
チームが希望する場合、2way契約からNBA本契約への切り替えをすることが可能です。 *7
また現状の2way契約を打ち切って、新たにNBA本契約の交渉することも出来ます。
先ほど説明した通りNBAプレーオフに2way選手は出場できませんので、チームがプレーオフでもその選手を起用したい場合はレギュラーシーズン最終ゲームまでにNBA本契約を結ぶ必要があるんですね。
ここからは実際に2way契約からNBA本契約を勝ち取った選手の例を見ていきましょう。
Quinn Cook
- 契約チーム:Golden State Warriors
- 契約内容:2年 $1.5M
クイン・クックは2017-18シーズンにゴールデンステイトウォーリアーズと2way契約を結んでいました。
あまり出場機会の多くなかったクックですが、シーズン途中ステフィン・カリーらの怪我により出場機会を得ることになります。
安定したシュートを評価されて徐々に出場時間を伸ばしていったクックは、シーズン終盤にウォーリアーズと2年契約でNBA本契約を締結。
そして2019年のオフシーズンにはロサンゼルスレイカーズと2年 $6MのNBA本契約を結ぶこととなりました。
Danuel House Jr.
- 契約チーム:Houston Rockets
- 契約内容:1年 $1.1M
ダニュエル・ハウスJr.は2018年にヒューストンロケッツと2way契約を結びました。
シーズン途中から持ち前のディフェンス力やウイングでの働きなどを評価されて出場時間を獲得。
チームにとっては十分な活躍でしたので、当然ロケッツはNBA本契約の交渉を行い「3年ミニマム契約」を提示します。
しかしハウスはこれを拒否。
「シーズンの残りをNBA本契約へ切り替えるだけなら受け入れる」ということなりました。
つまりオフシーズンFAになればより高額な契約を受けられるという自信があったんですね。
結果的にそのオフシーズンにヒューストンロケッツと3年 $11.1Mでの契約に合意し、晴れて複数年契約でのNBA本契約を勝ち取りました。
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まとめ
今回は2way契約について解説してきました。
かなり長くなってしまいましたが何となく理解できましたでしょうか?
2way契約を結んでいる選手について理解することで、よりNBAを楽しんでいただけると幸いです。
それではここで改めて今回解説した内容をおさらいしておきましょう。
- 2way契約の選手は基本Gリーグで活動
- 提携先のNBAチームに最大45日帯同できる
- 海外リーグへの流出を防ぐことが背景
- 契約期間は1〜2年
- サラリーはチーム帯同日数によって決まる
- NBAチームではルーキーミニマムサラリー
- Gリーグチームでは2wayスケールサラリー
- 保証は上限$50,000
- 2020-21からいくつか変更点も
- ロスターとは別枠で2人の2way契約が可能
- チームサラリーには計上されない
- 契約したNBAチームのみコールアップ可
- NBAプレーオフには出場できない
- チームはNBA本契約に切り替え可能
- 2way契約を破棄し新たなNBA本契約の交渉も
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
*1:シーズン開幕後に2way契約を結んだ場合、帯同可能日数は日割りで変動
*2:2019-20シーズンの「ルーキーミニマムサラリー」を元に「NBAレギュラーシーズンの日数」を177日として概算
*3:2019-20シーズンの「2wayスケールサラリー」を元に「Gリーグレギュラーシーズンの日数」を177日として概算
*4:シーズン開幕後に2way契約を結んだ場合には日割り計算で減少
*5:保証額が$50,000以上の選手がシーズン途中にウェイブされても、残りのシーズンに2way契約は結べない
*6:「NBAチーム帯同日数=40日」「NBA日割り=$4,737」「Gリーグ帯同日数=100日」「Gリーグ日割り=$528」として計算し、NBAチーム帯同日数は宮地さん(@yokomiyaji)のツイートより