ここ最近NBAのオフシーズンには電撃的なトレードや移籍が目立ちますね。
特に今年は輪を掛けて大きなインパクトがあった年だと言ってもいいのではないでしょうか。
カイリー・アービングとケビン・デュラントのネッツ加入、カワイ・レナードとポール・ジョージのクリッパーズ移籍、ラッセル・ウエストブルックとクリス・ポールのトレードなどなど...。
こういったスター選手たちの契約について調べていると、マックス契約という単語をよく目にします。
「マックス」という言葉から何か上限的な契約だということは想像できるのですが、調べてみると意外と複雑ですよね。
というわけで今回は、簡単に見えて実は複雑なマックス契約について解説していきます。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
この記事では"マックス契約"という用語を詳細にではなくざっくり解説します。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"マックス契約"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- そもそもマックス契約って何?
- 貰えるサラリーは決まってる?
- マックス契約はなぜ必要?
- 特定選手とかベテラン特定選手って?
- デリック・ローズルールって?
- ケビン・デュラントルールって?
- スーパーマックス契約とは何が違う?
ではこれらの疑問をしっかり解決できるように、"マックス契約"について説明していきます。
マックス契約
まずはマックス契約というものをざっくりと解説していきます。
ここでは「マックス契約とは」「なぜマックス契約が必要なのか」に注目して見ていきましょう。
マックス契約とは
マックス契約とは、チームと選手が結ぶことのできる上限の契約のことです。
チームと選手が結ぶことができる上限の契約
マックス契約で結ぶことが出来る上限額というのは、全員が決まった金額というわけではありません。
その選手の「NBA在籍年数」とリーグの「サラリーキャップ」から決められます。
マックス契約の上限額
これがマックス契約で結ぶことができる契約の上限額(初年度)です。
この金額を基準として2年目以降の契約金額も決まっていきます。
これだけチームサラリーキャップの大部分を占める契約ですので、マックス契約は必然的に限られたスター選手と結ぶことになりますね。
なぜマックス契約が必要?
このマックス契約というものがなぜ必要なのかを改めて考えてみましょう。
マックス契約には大きく分けて2つの目的があります。
一つは「年俸の過度な高騰を制限する」ということ。
先ほど紹介したように、選手のNBA在籍年数やリーグのサラリーキャップによって上限額を定めています。
これによって選手のサラリーが急激に高騰したり、チームの財政に影響を与えるような事態を防いでいるんです。
加えてこのマックス契約には「いま在籍しているチーム」がスター選手との契約延長や再契約を有利にできるというテーマもあります。
この点については今回の記事を読み進めていただければ何となく理解できると思いますので、ここではざっくりとだけ解説しておきます。
在籍中のチームと他のチームが「提示可能な契約」の一例を比較してみましょう。
一口に大型契約といっても「今いるチームと再契約する」のか「FAで別のチームと契約する」のかによって大きく変わってきます。
この例の場合、「契約年数」「昇給額」の面でも在籍中のチームとの契約をする方が選手にとって魅力的であることがわかりますね。
怪我や成績不振などで1年後はどうなっているか分からないのがアスリートの世界なので、選手にとって契約年数の差や昇給率の差はとても重要になってきます。
チームは在籍しているスター選手にマックス契約を提示することによって、より良い条件で残留を交渉を進めることが出来るんですね。
上の例のような契約年数や昇給額の違いを理解する上で重要な「バード権」については別の記事で詳しく解説しています。
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さらにデカい契約
ここまでマックス契約という用語の基本を紹介しました。
「よし。もう少し調べてみよう」とWikipediaなどを読んでいきます。
すると「特定選手」「デリック・ローズ ルール」「ケビン・デュラント ルール」「スーパーマックス契約」「ベテラン特定選手」と唐突にごちゃついてきますね。
何となくデカい契約だということはわかりますが、それぞれ個別の用語説明をみてもイマイチ納得できないかもしれません。
なのでここからは混乱しがちなこれらの契約を「契約のタイミング」「通常の契約との違い」「契約基準」などに注目しながら確認していきましょう。
特定選手
選手がルーキー契約に続く新たな契約を結ぶとき、チームはその選手を特定選手(Designated Player)に指定することが出来ます。
特定選手はチームと「最大5年の契約」を「サラリーキャップの25%」の金額で結ぶことが可能です。*1 *2
- タイミング:ルーキー契約に続く新たな契約
- 通常との違い:4年25% → 5年25%
基本的にルーキー契約に続く契約の場合は「最大4年の契約」が上限とされています。
しかしこの特定選手には、より長い「最大5年の契約」を結ぶことが認められているんです。
若手選手が「5年$150Mの契約延長」みたいな報道もよく目にしますが、実は特定選手の契約だったりするんですね。
スター選手が中心となるこの特定選手の中でも、更に傑出した成績を残した選手はもっと良い条件で契約ができます。
次はその基準となるデリック・ローズ ルールについても見ていきましょう。
デリック・ローズ ルール
正式には"5th Year, 30% Max criteria"という契約基準なのですが、デリック・ローズ ルールとして知られています。
この基準を初めてクリアしたのがデリック・ローズだったことからそう呼ばれているんですね。
"ALL-NBA Team(1st~3rd)"に直近のシーズンで選出 or 3年以内に2度選出
"DPOY(最優秀守備選手)"を直近のシーズンで受賞 or 3年以内に2度受賞
"MVP"をここ直近3シーズン以内に受賞
特定選手の中でこのデリック・ローズ ルールの条件を1つでも満たした選手は、「最大5年の契約」を「サラリーキャップの30%」の金額で結ぶことが可能になります。
- タイミング:ルーキー契約に続く新たな契約
- 通常との違い:4年25% → 5年30%
特定選手という制度によって、若手でも有望な選手には長期的な契約を結ぶことが可能になります。
さらに傑出した選手にはもっと高額なサラリー提示をすることで、在籍チームが有利に残留交渉を進められるというテーマが窺えますね。*3
ベテラン特定選手
特定選手契約という制度によって、チームは若手スター選手にさらにデカい契約を提示できることが分かりました。
加えて2017年からは若手だけでなく、ベテラン世代のスター選手に対しても特定選手を指定することが可能になったんです。
これをベテラン特定選手(Designated Veteran Player)と言います。
選手がNBA在籍7〜9年目に新たな契約を結ぶとき、チームはその選手をベテラン特定選手に指定することが出来ます。
ベテラン特定選手は「最大5年の契約」を「サラリーキャップの35%」の金額で結ぶことが可能です。
一般的にこのベテラン特定選手が結ぶ契約のことをスーパーマックス契約と呼んでいます。*4 *5
- タイミング:NBA在籍7〜9年目の契約延長/再契約
- 通常契約との違い:5年30% → 5年35%
ちなみにベテラン特定選手になることが出来るのは、「ルーキーからそのチームに在籍していた選手」もしくは「ルーキー契約中にトレードで移籍してきた選手」です。
つまりスーパーマックス契約は、基本的にずっと同じチームにいた生え抜きの選手が対象の契約ということになります。
これは2016年にケビン・デュラントがゴールデンステート ウォーリアーズへ電撃移籍したことによって、CBAが2017年に定めた比較的新しいルールです。*6
なのでスーパーマックス契約を結ぶ際の基準となるものを"ケビン・デュラント ルール"と呼んだりします。
次はそのケビン・デュラント ルールについて見ていきましょう。
ケビン・デュラント ルール
正式には"Designated Veteran Player 35% Max Criteria"という契約基準なのですが、一般的に"ケビン・デュラント ルール"と呼ばれます。
この基準を満たした選手はベテラン特定選手としてスーパーマックス契約を結ぶことが出来るんです。
"ALL-NBA Team(1st~3rd)"に直近のシーズンに選出or3年以内に2度選出
"DPOY(最優秀守備選手)"を直近のシーズンで受賞or3年以内に2度受賞
"MVP"を直近3シーズン以内に受賞
この基準を1つでも満たした選手は、スーパーマックス契約つまり「最大5年の契約」を「サラリーキャップの35%」の金額で結ぶことができます。*7 *8
先ほども触れましたが、そもそもこのルールは当時OKCサンダーに所属していたケビン・デュラントがウォーリアーズに電撃移籍したことがキッカケです。
そこからウォーリアーズはNBAファイナル2連覇を達成し、デュラント本人もファイナルMVPを2年連続で受賞。
一方のサンダーはカンファレンスファイナルにすら進めませんでした。
このようなリーグを代表するベテランスター選手がFA移籍で抜けてしまうことは、チームだけでなくリーグにも大きな影響を与えてしまいます。
そこで2017年にCBAはベテラン選手がスーパーマックス契約を結べるようにし、他のチームよりもこれまで在籍してきたチームが有利に残留交渉できるようにしたんです。
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- ルーキー契約に続く契約で特定選手に
- 特定選手は4年25%→5年25%
- デリック・ローズルールもある
- ローズルール達成で4年25%→5年30%
- 2017年からはベテラン特定選手も
- KDルール達成で5年30%→5年35%
まとめ
今回はマックス契約や特定選手などについて解説してきました。
かなり長くなりましたが理解できましたでしょうか?
マックス契約は選手にもチームにも重要な契約です。
契約に関する様々なニュースを見た際、今回記事を参考にしてNBAをもっと楽しんでいただけると嬉しいです。
ここで改めて今回のマックス契約について解説したポイントをまとめておさらいしましょう。
- マックス契約はチームと選手が結ぶ上限の契約
- NBA在籍年数とサラリーキャップから上限が決められる
- サラリーの過剰な高騰を防ぐ
- スター選手との再契約を有利に交渉できる場合も
- ルーキー契約に続く契約で特定選手に
- 特定選手は4年25%→5年25%
- デリック・ローズルールもある
- ローズルール達成で4年25%→5年30%
- 2017年からはベテラン特定選手も
- KDルール達成で5年30%→5年35%
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿しておりますので是非覗いてみてください。
*1:正確には「現在残っている契約と合わせて合計6年になる契約延長」もしくは「5年の再契約」が可能
*3:特定選手はチームに2名までロスター登録可能だが、トレード獲得の特定選手2名をロスター登録することはできない
*4:正確には「現在残っている契約と合わせて合計6年になる契約延長」もしくは「5年の再契約」が可能
*5:デリック・ルーズルールが適用された特定選手の契約も"スーパーマックス契約"と呼ぶことも
*6:"CBA"=NBA団体交渉協約のことでいわゆる「労使協定」にあたるもの
*7:ちなみにこのベテラン特定選手もチームに2名までロスター登録可能だが、トレード獲得の特定選手2名をロスター登録することはできない
*8:ベテラン特定選手としての契約後は1年間トレード不可