今年のオフシーズンも数々の大物FA選手たちの移籍が行われましたが、当然若手選手たちにも動きがありました。
オフシーズンのチームの動きを追っていると、一部の若手選手が"制限付きFA"と呼ばれていることに気づきます。
文字通り「なにか制限のあるFA選手」だということは分かりますが、調べてみると意外と知らないことも多い制限付きFAという制度。
今回はそんな制限付きFAを中心にNBAのフリーエージェントについて解説していきます。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
この記事では"制限付きFA"という用語を詳細にではなくざっくり解説します。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"制限付きFA"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- そもそもFAって何?
- 「制限なし」と「制限付き」はどう違う?
- 制限付きFAになるのはどんな選手?
- "クオリファイング・オファー"ってなに?
- なぜ制限付きFAにするの?
- 制限付きFAになった選手のその後は?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"制限付きFA"について説明していきます。
FA(フリーエージェント)
FAとは
フリーエージェント(Free Agent)
契約期間の終了などで、どのチームにも所属していない状態の選手のこと。
NBAには"制限なしFA"と"制限付きFA"と呼ばれる2種類のFAが存在しています。
制限なしFA
制限なしFA(unrestricted free agent)
制限なしFA(UFA)になった選手はどのチームとでも自由に契約することが可能で、前所属チームはそれを制限することができません。*1
つまり「前所属チームに残留する」「新チームに移籍する」といった去就の最終決定権を選手自身が持っているということです。
制限付きFA
制限付きFA(restricted free agent)
制限付きFA(RFA)となった選手は基本的にどのチームとでも契約に合意できますが、前所属チームが"優先権"を行使した場合は選手をチームに残留させることが可能です。
制限付きFA選手が他チームとの契約に合意した場合、前所属チームはその契約内容が記載されたオファーシートを受け取ります。
そのオファーシートにマッチ(同じ内容での契約)することで、優先的に当該選手を残留させることが可能なんです。詳しくは後ほど解説します。
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NBAには"制限なしFA"と"制限付きFA"が存在する
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制限なしFAはどのチームとでも自由に契約が可能
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制限付きFAは前所属チームが優先権を持っている
- 他チームと合意したオファーシートにマッチすれば選手を残留させられる
制限付きFA
ここからは制限付きFAについて解説していきます。
「どのような選手」が「どうすれば」制限付きFAになるのか、また「なぜ制限付きFAにするのか」というポイントに注目して確認していきましょう。
選手を制限付きFAにするには
チームはどんな選手でも制限付きFAにすることが可能という訳ではありません。
制限付きFAになり得るのは、以下の3つのパターンの場合です。
⑴ドラフト1巡目指名でルーキースケール契約の4年目を終了した選手
⑵NBA在籍1〜3年目のシーズンを終了したFA選手 *2
⑶シーズンで15日以上チームに帯同した2WAY契約の選手
この3つのどれかに当てはまる選手に対して、チームが"クオリファイング・オファー"を提示した場合に選手は制限付きFAとなります。
次はそのクオリファイング・オファーについて具体的に確認していきましょう。
クオリファイング・オファー
制限付きFAにしたい⑴〜⑶の選手に対してチームはクオリファイング・オファーというもの提示します。*3
クオリファイング・オファー(QO)とは、「チームは君を残留させる意思があるよ」ということを示す「1年契約」のオファーです。*4
このクオリファイング・オファーで提示されるサラリーは先程の3つのパターンによってそれぞれ異なります。
⑴ドラフト1巡目指名でルーキースケール契約の4年目を終了した選手
→「ルーキースケール契約4年目サラリー × 規定の上昇率」(130%〜150%の上昇率がドラフト指名順によって規定されている)*5
⑵NBA在籍1〜3年目のシーズンを終了したFA選手
→「昨シーズンのサラリーの125%」or「ミニマムサラリー+$0.2million」の高い方
⑶シーズンで15日以上チームに帯同した2WAY契約の選手
→「$50,000保証の2WAY契約」*6
このクオリファイング・オファーで提示されるサラリーは、基本的に前年までのサラリーと大して変わらないような金額になっているというのもポイントです。
"starter criteria"と"maximum QO"
この項はクオリファイング・オファーの補足となりますので、制限付きFAをざっくり理解したい方は読み飛ばしてもらってもOKです。
"starter criteria"
クオリファイング・オファーの提示額は、選手の働き次第で規定額よりも増減する場合があります。
その働きを判断する基準となるのが"starter criteria"です。*7
昨シーズンもしくは直近2シーズンの平均で「41試合以上スタート」or「2000分以上出場」
提示額が増減するのは以下の3つの場合です。
- ドラフト10〜30位指名の選手がstarter criteriaを満たした場合→ドラフト9位指名相当の金額でQOが可能に
- ドラフト2巡目指名orドラフト外の選手がstarter criteriaを満たした場合→ドラフト21位相当の金額でQOが可能に
- ドラフト1〜14位指名選手がstarter criteriaを満たさなかった場合→ドラフト15位相当の金額までしかQOを提示できなくなる
選手が期待以上に働いた場合にはQOの額は増加し、期待よりも働いていなかった場合にはQOの額は減少させられるという仕組みになっています。
"maximum qualifying offer"
ルーキースケール契約の4年目を迎える選手には"maximum qualifying offer"を提示して、「最大5年契約」の"マックス契約"という大型契約を結ぶことができます。
これは例外的なクオリファイング・オファーのようなもので、若手のスター選手に提示するものです。
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- 制限付きFAになるのは3つのパターンの選手
- 対象となる選手にクオリファイング・オファーを提示すると制限付きFAになる
- それぞれのパターンによってサラリーが定められている
- "starter criteria"を満たすかどうかでサラリーが変わる場合がある
- チームが"maxQO"を提示した場合にはマックス契約が可能
なぜ制限付きFAに?
そもそもなぜ制限付きFAというものが存在するのでしょうか。
ここでは制限付きFAが持つテーマや、選手・チームの視点から見た制限付きFAについて深堀りしていきましょう。
制限付きFAのテーマ
ここまでの内容をざっくり振り返ると「チームは選手にクオリファイング・オファーを提示し制限付きFAにしておけば、他チームからのオファーがあってもマッチして残留させられる」というものでした。
このような内容からも分かるように、基本的には「選手の流出を防ぐ」ということが制限付きFAのテーマです。
将来有望な若手の選手が流出するのを防ぐ
せっかく育ててきた選手が簡単に他のチームに移籍してしまうというのは、チームだけでなくファンにとっても残念です。
そう考えると、この制限付きFAは「チーム側」からすれば非常に便利な制度のように思えます。
ですがもう一方の「選手側」からはどのように見えるのでしょうか。
次は制限付きFAを「チーム側」と「選手側」それぞれから考えてみましょう。
チーム側からみたRFA
チームは制限付きFAという制度を利用することによって、状況合わせた柔軟な対応が可能になります。
選手を制限付きFAにしておくことで、チームのロスター状況やサラリー状況によってクオリファイング・オファーを取り下げたり、他チームからのオファーにマッチするなどの対応を後から選ぶことが出来るんです。
選手側からみたRFA
前所属チームに残留することを希望している選手からすれば、制限付きFAでとりあえずキープされるのではなくより大きな新契約を提示してもらいたいというのが本音です。
逆に移籍を希望している選手にとっては、他チームと契約できても前所属チームがマッチして残留させられてしまうかもしれません。*8
つまり 「選手の流出を防ぐ」というこの制度の性質上、制限付きFAというものは基本的にチーム側が有利になることが多いんです。
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- 選手の流出を防ぐことがテーマ
- チームは柔軟な対応が可能になる
- 性質上チーム側が有利になる場合が多い
制限付きFAのその後
では制限付きFAになった選手はその後どうなっていくのでしょうか。
制限付きFA選手の「選択」と「契約」に注目して、主な4つの選択肢それぞれの場合をみていきましょう。*9
QOを受け入れる
契約:1年契約で残留
クオリファイング・オファーを受け入れた選手は1年契約で前所属チームに残留し、翌年のオフシーズンに制限なしFAになります。
先ほども確認したように、クオリファイング・オファーで提示されるのは基本的にルーキー契約とあまり変わらない金額での1年契約。
なのであくまで翌年「制限なしFAになる」ということを目的として、このクオリファイング・オファーを受け入れることも多いです。
他チームとの契約に合意
契約:最低2年以上の契約で残留or移籍
制限付きFAになった選手が他のチームとの契約に合意した場合、前所属チームはそのオファーシートにマッチするかどうかを2日以内に決定します。
先述の通りこのオファーシートにマッチすると選手は前所属チームに残留となり、マッチしなかった場合は新チームに移籍となります。*10
このオファーシートには「契約年数」「サラリー」「保証内容」「一部ボーナス」などの契約条件が含まれ、最低2年以上の契約年数を提示する必要があるんです。
ちなみに前所属チームがオファーシートにマッチして選手を残留させた場合は、「選手の同意なしにトレード」「契約内容を変更」「当該選手が合意していたチームにトレード」をすることが1年間禁止されます。
前所属チームと新契約
契約:新契約で残留
前所属チームは制限付きFA選手と、クオリファイング・オファーとは別の新契約を結ぶ交渉も行うことができます。
交渉が成立した場合は、新契約で前所属チームに残留となります。
MAXQOを受け入れる
契約:最長5年のマックス契約で残留
先ほども説明した"maximum qualifying offer"がチームから提示され、それを受け入れた場合には選手は最長5年のマックス契約を結ぶことが可能です。
その場合はマックス契約で前所属チームに残留します。
"maximum qualifying offer"が提示された制限付きFA選手に対しても他のチームはオファーをすることができますが、その場合は最低3年以上の契約を提示する必要があるんです。
以上が制限付きFA選手の主な選択肢4つです。*11
補足になりますが、どのチームとも契約合意しなかった制限付きFA選手の場合は、サイン&トレードで他のチームへと移籍することもできます。
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まとめ
今回は"制限付きFA"について解説してきました。
オフシーズンの移籍市場などをチェックする際に、この記事でNBAをさらに楽しんでいただければ幸いです。
ここで改めて今回の解説したポイントをまとめておさらいしましょう。
- NBAには"制限なしFA"と"制限付きFA"が存在する
- 制限なしFAはどのチームとでも自由に契約が可能
- 制限付きFAは前所属チームが優先権を持っている
- 対象となる選手にクオリファイング・オファーを提示すると制限付きFAになる
- 他チームと合意したオファーシートにマッチすれば選手を残留させられる
- 選手の流出を防ぐことがテーマ
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
*1:この記事では、FAになる選手が直近に所属していたチームのことを「前所属チーム」と表記
*2:ドラフト1巡目指名のルーキースケール契約選手が3・4年目の契約延長をしなかった場合は、"制限なしFA"になるのでこれには当てはまらない
*4:「全額保証」の1年契約
*6:新たに2WAY契約が結べない選手は、Gリーグでのサラリー分が保証されるミニマムサラリー額が提示される
*7:2WAY契約選手は対象外
*8:他チームはマッチされないようになるべく高額のオファーを提示してきますので、一概に全ての場合とは言えません。
*9:クオリファイング・オファー、新契約、他チームからのオファーどれもサインしなかった場合は、所属チームは再度クオリファイング・オファーを提示することができ翌シーズンオフには再び制限付きFAになる
*10:マッチされた場合選手は2日以内に身体検査を受ける必要があり、問題が見つかった場合にはマッチを撤回することができる
*11:QOを取り下げて制限なしFAになった場合は除く