SNSや現地記事などを見ていると常々思うのが専門用語の多さです。
至る所にバスケの用語が使われており、最近NBAを見始めた人にとっては解読が難しいことも多々あると思います。
今回紹介したいのはNBA玄人たちが選手の分析をする際によく使っているTS%というスタッツ。
TS%という用語自体はなんとなく見たことがありますが、具体的には一体どんなことが分かるのでしょうか。
また、なぜNBA玄人はこのTS%というスタッツを重視しているのでしょうか。
というわけで今回はそんなTS%について紹介したいと思います。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"TS%"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- TS%って?
- どうやって計算するの?
- TS%はなぜ重要?
- 今シーズンTS%が高い選手は誰?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"TS%"について説明していきます。
TS%
まずはTS%の概要をざっくりと紹介します。
「TS%とは何か」「TS%の計算方法」に注目して見ていきましょう。
TS%とは
TS%(True Shooting percentage)はオフェンスを評価する際に用いられる指標です。
直訳で「真のシュート確率」といかにも重要なスタッツって感じがしますね。
試しに"TS%"を検索するとこのような説明が出てきます。
True shooting percentage is a measure of shooting efficiency that takes into account field goals, 3-point field goals, and free throws.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
ざっくり訳すと「TS%はフィールドゴール、3Pシュートのフィールドゴール、フリースローを考慮してシュート効率を測るもの」だそうです。
なるほど用語の説明自体は非常にシンプルで、「真のシュート確率」と銘打っている理由も見えてきました。
一般的にバスケットボールの「シュート確率」と言われて頭に浮かぶのは"FG%"というスタッツ。
そもそもFGというのはボールライブ(ゲームクロックが進行している)時に行われるシュートの総称、つまり2Pシュートと3Pシュートを指しています。
なのでFG%というスタッツに2Pシュートと3Pシュートは含まれていても、当然フリースローの要素は含まれていません。
TS%の場合は2Pシュートと3Pシュートだけでなくフリースローも考慮に入れることによって、FG%では知ることができない部分まで導き出しているということなんです。
つまりTS%は「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」というテーマを持ったスタッツなんです。
ひとまずはTS%がこういったテーマ持っているとざっくり頭に入れたところで、次はスタッツの計算方法について確認していきましょう。
計算方法
スタッツの計算を自力でする機会なんて殆ど無いとは思いますが、このスタッツを理解する為に計算方法も見ておきたいと思います。
TS%は以下の計算式で求めることができます。*1 *2 *3
一見シンプルな計算式にも見えますが、よく見てみると中身は意外に複雑です。
これは単なる「確率」を計算しているのというよりむしろ、攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているというイメージの計算式なんです。
このあたりについて書くとかなり長くなってしまいますので、別の記事で詳しく解説しています。
計算式についても納得した上でスタッツをしっかり理解したいという方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。
とりあえずはこの計算式が「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」というテーマを落とし込んだものだと何となく把握できればOKです。
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- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
TS%の意義
ここまでTS%の概要や計算方法について紹介してきました。
では次にもう少し踏み込んで、このTS%の意義を「フリースローの重要性」「2019-20シーズンのTS%上位選手」「TS%とボリューム」「eFG%との違い」というポイントから紐解いていきたいと思います。*4
フリースローの重要性
何と言ってもTS%の最大の強みはFGに加えてフリースローも考慮しているという点です。
ではフリースローを考慮することになぜ意義があるんでしょう。
選手のシュートについて分析したいのであれば分かりやすいFG%というスタッツがありますし、わざわざTS%を使うことに疑問を持つかもしれません。
確かにFG%は選手のシュート確率を明確に示している指標ですので、ある程度のオフェンス能力を評価することが出来ます。
しかし場合によってFG%だけでは不十分、時には見当違いなものになってしまうことがあるんです。
というのもまず大前提としてFG%はあくまでシュート確率を示している指標で、選手のシュート効率や得点能力まで計れるものではないというのがポイントです。
例として2019-20シーズンの実際のスタッツを見ながら考えていきましょう。*5
この2人のスタッツを見てみると、選手Aは選手Bよりも若干高いFG%を記録しています。
3Pシュートの確率を見ても分かる通り、この表からは少なくともシュート確率という点で選手Aの方が優れていると読み取れますね。
ではここにフリースローのスタッツも並べてみましょう。
すると選手Bは試合中にフリースローをかなり多く獲得し、さらにそれを高確率で決める選手だということが分かりました。
フリースローでの得点は試合の勝敗を左右することもある非常に重要な要素です。
選手Bはそれほど重要なフリースローを獲得する能力を持っていたわけですが、残念ながらFG%だけでそこまでの判断はできませんでした。
では改めてこの2人の選手をTS%で比べてみましょう。
FG%や3P%で優れていたのは選手Aでしたが、TS%ではこのように選手Bが大幅に上回っています。
つまりこのTS%というスタッツを使うことによって、バスケットボールにおいて重要な要素であるフリースローでの得点能力も加味したシュート効率を評価できるというわけなんですね。
念のため言っておくと、選手のシュート確率・精度を見たい場合にFG%というスタッツが有効なのは間違いありません。
ただこの例からも分かるように、フリースローを含めた実際の得点に基づくシュート効率(得点能力)まで分析したい場合にはTS%の方がより有効だと言えそうですね。
ちなみに選手Aはザック・ラビーン、選手Bはジェームズ・ハーデンでした。
2019-20 TS%上位選手
次は2019-20シーズンのNBAにおけるTS%上位選手を見ながら、このスタッツの傾向についても見ておきましょう。*6 *7
ダンクでの得点やインサイドに飛び込んでフリースローを貰えるビッグマン、3Pシュートの得意なトップシューターが上位に入る傾向がありますね。
このシーズンのリーグ平均TS%は55.6で、近年はこのあたりが一つの目安となっています。
TS%が65を超えるようなら超優秀、50を下回るならシュート効率に難ありといったイメージです。
TS%とボリューム
ここまで見てきたようにTS%はシュート効率を測ることのできる非常に有益なスタッツです。
しかしながらTS%だけを見ていればオフェンス全体を評価することができるいうわけではありません。
というのもTS%はシュート効率、つまりオフェンスにおける質の部分を測る指標です。
なのでオフェンス能力の全貌を知るためにはボリューム(量)の面を合わせて見ておく必要があるんですね。
たとえば2019-20シーズンのTS%を見てみると、レイカーズのジャベール・マギーは65.5、ティンバーウルブスのカール・アンソニー・タウンズは64.2という記録でした。
両者ともに高いTS%ですが、これだけ見るとマギーに少し分があります。
ただ1試合あたりのフィールドゴール試投数とフリースロー試投数の合計を比較してみると、マギーは5.8本、タウンズは24.3本でその差は歴然です。
若干低いシュート効率であってもより多くのシュートを打っているのはタウンズですので、オフェンス全体を考えるとタウンズの方がより有益な選手だと言えそうですね。
当然この2選手には役割の違いや出場時間の差などがありますので、必ずしもボリュームの大きい選手が優れているわけではありません。
要するにTS%という有益なスタッツもあくまでシュート効率を測る指標であり、それだけでオフェンス全体を網羅できる訳ではないというコトを頭に入れておく必要があるんですね。
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eFG%との違い
今回紹介したTS%によく似た「eFG%」というスタッツとの違いについては、別の記事で詳しく解説しています。
どちらもNBAを理解する上で重要なスタッツですので、是非あわせてご覧ください。
- 最大の強みはFTを考慮している点
- FTでの得点は非常に重要な要素
- FTを含めた得点能力が分かる
まとめ
今回はTS%について解説しました。
長くなってしまいましたが理解できましたでしょうか。
スタッツの持つテーマやその意義を理解しておくことによって、必要な情報を読み取れるようになればNBAをより楽しむことができると思います。
今回の記事が少しでもその役に立てれば幸いです。
ではここで今回紹介した内容を改めておさらいしておきましょう。
- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
- 最大の強みはFTを考慮している点
- FTでの得点は非常に重要な要素
- FTを含めた得点能力が分かる
最後に
今回解説したTS%に基づいて「NBA史上最もシュート効率が高い選手」などもランキングで紹介していますのでこちらも合わせてご覧ください。
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
→「用語で解るNBA」カテゴリーの記事一覧
(参考)
https://www.basketball-reference.com/
https://fansided.com/2015/08/31/nylon-calculus-101-true-shooting-percentage/
https://www.espn.com/fantasy/basketball/story/_/id/28230879/using-true-shooting-percentage-helps-uncover-hidden-fantasy-values
*1:PTS=得点、FGA=フィールドゴール試投数、FTA=フリースロー試投数
*2:https://www.basketball-reference.com/about/glossary.htmlを参照
*3:媒体によっては異なる計算式を用いることもある
*4:ここで紹介するスタッツは2020.5.1時点でのhttps://www.basketball-reference.comより抜粋
*5:それぞれ1試合あたりの、FG=フィールドゴール成功数、FGA=フィールドゴール試投数、FT=フリースロー成功数、FTA=フリースロー試投数
*6:2020.5.1時点でのhttps://www.basketball-reference.com及びhttps://stats.nba.com/players/advanced/に準ずる
*7:出場試合数等の最低基準に満たない選手は含まない