このブログでは以前「eFG%」と「TS%」というスタッツを紹介しました。
どちらも選手の能力をより深く知る為に重要なスタッツです。
eFG%は「実質のFG成功率」、TS%は「真のシュート確率」と何となく似たような名前ですが、それぞれが持っているテーマやスタッツから読み取れる情報には大きな違いがあります。
ということで今回はeFG%とTS%の違いに注目してみたいと思います。
2つのスタッツはどこが違い、どのように使い分けられているのかなど、それぞれの概要を振り返りながら確認していきましょう。
押さえておきたいポイント
eFG%とTS%の違いを理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- eFG%って?
- TS%って?
- 2つは何が違うの?
- スタッツから何が分かる?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、2つのスタッツについて説明していきます。
eFG%
まずはeFG%の概要をざっくりと紹介します。
「eFG%とは何か」「eFG%の計算方法」に注目して見ていきましょう。
eFG%とは
eFG%(effective Field Goal percentage)はオフェンスの評価をする際に用いられる指標、いわゆる"Four Factors"の一つです。
日本語にするなら「実質のFG成功率」といったところでしょうか。
eFG%の解説を見るとこのように記載されています。
This statistic adjusts for the fact that a 3-point field goal is worth one more point than a 2-point field goal.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
「3Pシュートが2Pシュートよりも1点多いという事実を調整するもの」だそうです。
一体どういうことでしょうか?
そもそもFG%というものはあくまで「FGの成功率」を表したスタッツです。
なので決めたシュートが「2Pシュートだったのか3Pシュートだったのか」までは考慮されません。
しかし実際のところ2Pシュートと3Pシュートには単純に「2点」と「3点」という価値の違いがあります。
3Pシュート試投数が大幅に増加する現代NBAを目の当たりにしている私たちにとっては、その重要性について今更確認するまでもありませんよね。
eFG%はそんな2Pシュートと3Pシュートの価値の違いを考慮し「FG%に3Pシュート分の付加価値を加味した成功率を見てみよう」というテーマのスタッツなんです。
計算方法
そんなeFG%は以下の式で計算することができます。*1 *2 *3
筆者のような文系出身の数字嫌いからすると、こういった数式が出てきた時点で考えるのをやめます。
ですのでこの数式をもう少し噛み砕いて見ておきましょう。
要するに「①FGに3Pシュート成功分の付加価値を加えている」もしくは「②FGを2Pシュートと3Pシュートに分解している」ということです。
一見すると複雑な計算式でしたが、eFG%というものの考え方を式に落とし込んでいるだけでしたね。
今時スタッツなんて調べれば幾らでも出てきますが、もし自力で計算する場合には分かりやすい方や手元の数値で計算できる方を使ってみてください。
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- eFG%とはFG%に3Pを加味したもの
- eFG%=(FGM+0.5*3PM)/FGA
- eFG%=(2PM+1.5*3PM)/FGA
TS%
続いてはTS%の概要をざっくりと紹介します。
「TS%とは何か」「TS%の計算方法」に注目して見ていきましょう。
TS%とは
TS%(True Shooting percentage)はオフェンスを評価する際に用いられる指標です。
直訳で「真のシュート確率」といかにも重要なスタッツって感じがしますね。
試しに"TS%"を検索するとこのような説明が出てきます。
True shooting percentage is a measure of shooting efficiency that takes into account field goals, 3-point field goals, and free throws.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
ざっくり訳すと「TS%はフィールドゴール、3Pシュートのフィールドゴール、フリースローを考慮してシュート効率を測るもの」だそうです。
なるほど用語の説明自体は非常にシンプルで、「真のシュート確率」と銘打っている理由も見えてきました。
一般的にバスケットボールの「シュート確率」と言われて頭に浮かぶのは"FG%"というスタッツ。
FGというのはボールライブ(ゲームクロックが進行している)時に行われるシュートの総称、つまり2Pシュートと3Pシュートを指しています。
なのでFG%というスタッツに2Pシュートと3Pシュートは含まれていても、当然フリースローの要素は含まれていません。
TS%の場合は2Pシュートと3Pシュートだけでなくフリースローも考慮に入れることによって、FG%では知ることができない部分まで導き出しているということなんです。
つまりTS%は「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」というテーマを持ったスタッツなんです。
ひとまずはTS%がこういったテーマ持っているとざっくり頭に入れたところで、次はスタッツの計算方法について確認していきましょう。
計算方法
スタッツをより理解する為に計算方法も見ておきたいと思います。
TS%は以下の計算式で求めることができます。*4 *5 *6
一見シンプルな計算式にも見えますが、よく見てみると中身は意外に複雑です。
これは単なる「確率」を計算しているのというよりむしろ、攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているというイメージの計算式なんです。
このあたりについて書くとかなり長くなってしまいますので、別の記事で詳しく解説しています。
計算式についても納得した上でスタッツをしっかり理解したいという方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。
とりあえずこの計算式が「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」というテーマを落とし込んだものだと何となく把握できればOKです。
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- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
eFG%とTS%の違い
ではここからeFG%とTS%の違いについて見ていきましょう。
「テーマで比較」「実際のスタッツで検証」というポイントで確認していきたいと思います。
テーマで比較
まずはそれぞれのテーマから2つのスタッツを比較してみましょう。
eFG%
2Pシュートと3Pシュートの価値の違いを考慮し「FG%に3Pシュート分の付加価値を加味した成功率を見てみよう」
TS%
攻撃回数と実際の得点を元に「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」
2つのスタッツのテーマを比較したとき、最も大きな違いと言えるのはやはりフリースローを考慮しているかどうかという点ですね。
eFG%はFGという枠の中で、2Pシュートと3Pシュートの価値の違いに注目しているスタッツです。
一方のTS%はFGだけでなく、FTでの得点にも注目してシュート効率を導き出しています。
まずはこの「FTを考慮しているかどうか」というのが2つのスタッツを分ける大きな違いですね。
さらにそれぞれのスタッツから何が分かるのかという点にも違いがあります。
eFG%というのはFG%に3Pシュート分の付加価値を乗せてシュート確率を調整していました。
それによってFG%では知ることのできない「3Pシュートの能力も反映したシュート確率」を知ることができるようになっています。
つまりeFG%というのはより詳細な「シュート精度」を知ることができるスタッツなんですね。
一方のTS%はFTも含めた実際の得点を元に算出されています。
その得点と攻撃回数から、シュートの確率というよりはむしろシュート効率(得点効率)を導き出すものでしたね。
なのでTS%というものは選手の「得点効率」を知ることができるスタッツなんです。
このように2つのスタッツはともにシュートというプレーに着目していますが、eFG%は「シュート精度」、TS%は「得点効率」とそのスタッツから分かる内容にも大きな違いがあります。
ひとまず2つのスタッツには、「フリースローを考慮しているかどうか」「スタッツから分かる内容」という点で大きな違いがあることをざっくりと把握することができました。
ではそれらの違いを踏まえた上で具体的な数字を見たとき、私たちは選手をどのように分析すれば良いのでしょうか。
次は実際のスタッツを見ながらそのあたりを考えてみましょう。
実際のスタッツで検証
2019-20シーズンのスタッツから2人の選手をピックアップします。*7 *8
まず2人の選手をFG%だけで比較すると、選手Bの方がより高いシュート確率であることが分かります。
ただこれはあくまでFGの成功率を見ているだけに過ぎません。
ではここに3Pシュートの価値を考慮したeFG%を並べてみましょう。
すると逆にeFG%では選手Aの方が選手Bよりも高い数値を記録しています。
この表から選手Aは、
- 試合において3Pを多く打つ選手で
- その分FG%は低くなっているが
- 3Pの価値を考慮したeFG%は高い
とイメージ出来ますね。
つまり3Pの価値まで考慮した場合には、選手Bよりも選手Aの方がより高いシュート精度を持った選手であると分かりました。
次はここにFTを考慮したTS%を並べてみましょう。
今度はまた選手Bのほうが上回る結果となりました。
この表から選手Bは、
- 3Pのシュート精度では少し劣るが、
- フリースローをもらって得点に繋げられる
という感じの選手かなと想像できますね。
eFG%で劣っていてもこれだけTS%が高いということは、フリースローでしっかりと得点に繋げられている証拠ですので、より得点効率が良いのは選手Bだろうと分析できるわけです。
このようにスタッツの違いを理解した上でそれぞれの数字を見ると、何となく選手像がイメージできました。
では実際の3Pシュートとフリースローの数、選手名と合わせて2人の選手を見てみましょう。
選手Aはミルウォーキーバックスのウェスリー・マシューズでした。
マシューズといえばNBAを代表する3&D、つまり3Pシュートとディフェンスに定評のある選手。
まさにスタッツでイメージした通り高いシュート精度の持ち主です。
実際に3Pシュートの試投数も2倍以上多く、より高確率で決めていますね。
一方の選手Bはマイアミヒートのジミー・バトラーでした。
バトラーといえばNBAの中でも非常に決定力が高く、勝負強い選手という印象です。
スタッツを見ても分かる通りフリースロー試投数も非常に多く、FGだけでなくフリースローで得点につなげることができるという能力が見て取れます。
試合の勝敗を分けるような最終盤でバトラーにボールが集まる背景には、TS%の高さ、得点効率の高さがあったんですね。
この例から2つのスタッツを比べてみても、eFG%はフロアからのシュート精度、TS%はゲーム中の得点効率をより的確に教えてくれるものだと分かりました。
このように違いを頭に入れておくことで、その数字が意味すること、選手がどんな能力を持っているのか、何を得意としているのかがイメージできるようになります。
今回紹介したのは非常に分かりやすい例でしたが、実際にスタッツを見てみるとまた様々な発見があると思いますので是非調べてみてください。
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- FTを考慮しているかどうか
- eFG%からはシュート精度が分かる
- TS%からは得点効率が分かる
まとめ
今回のように似たようなスタッツでも、それぞれのテーマとその違いを理解しておくことで知りたい情報をしっかり読み取ることが出来そうですね。
さらにそれらのスタッツを組み合わせて分析することによって、よりNBAへの理解が深まると思います。
ではここで今回解説した内容を改めておさらいしておきましょう。
- eFG%とはFG%に3Pを加味したもの
- eFG%=(FGM+0.5*3PM)/FGA
- eFG%=(2PM+1.5*3PM)/FGA
- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
- FTを考慮しているかどうか
- eFG%からはシュート精度が分かる
- TS%からは得点効率が分かる
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
→「用語で解るNBA」カテゴリーの記事一覧
(参考)
https://www.basketball-reference.com/
https://blog.gc.com/2012/12/04/effective-field-goal-percentage-and-true-shooting-percentage/
*1:FGA=フィールドゴール試投数、FGM=フィールドゴール成功数、2PM=2Pシュート成功数、3PM=3Pシュート成功数
*2:https://www.basketball-reference.com/about/glossary.htmlを参照
*3:媒体によっては異なる計算式を用いることもある
*4:PTS=得点、FGA=フィールドゴール試投数、FTA=フリースロー試投数
*5:https://www.basketball-reference.com/about/glossary.htmlを参照
*6:媒体によっては異なる計算式を用いることもある
*7:ここで紹介するスタッツは2020.5.31時点でのhttps://www.basketball-reference.comより抜粋