このブログではこれまでに様々な用語の解説記事を投稿しています。
前回はNBAでも重要な「TS%」というスタッツについて、そのテーマや意義を踏まえて解説しました。
この中でスタッツの計算式についても触れましたが、詳細については書ききれずに割愛していました。
意外と複雑でスルーしてしまいがちなTS%の計算式ですが、スタッツについて理解する上で非常に重要なので改めて解説しておきたいと思います。
事前にTS%の解説記事を読んでスタッツの全体像を把握して頂くことをオススメします。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"TS%の計算式"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- TS%って?
- どうやって計算するの?
- 式の中の"0.44"ってなに?
- 3Pシュートの要素はどこ?
- TSの最大値は100?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"TS%の計算式"について説明していきます。
TS%
まずはTS%について改めておさらいしておきます。
「TS%とは何か」「TS%の計算方法」に注目してスタッツの概要を見ていきましょう。
TS%とは
TS%(True Shooting percentage)はオフェンスを評価する際に用いられる指標です。
直訳で「真のシュート確率」といかにも重要なスタッツって感じがしますね。
試しに"TS%"を検索するとこのような説明が出てきます。
True shooting percentage is a measure of shooting efficiency that takes into account field goals, 3-point field goals, and free throws.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
ざっくり訳すと「TS%はフィールドゴール、3Pシュートのフィールドゴール、フリースローを考慮してシュート効率を測るもの」だそうです。
なるほど用語の説明自体は非常にシンプルで、「真のシュート確率」と銘打っている理由も見えてきました。
一般的にバスケットボールの「シュート確率」と言われて頭に浮かぶのは"FG%"というスタッツ。
そもそもFGというのはボールライブ(ゲームクロックが進行している)時に行われるシュートの総称、つまり2Pシュートと3Pシュートを指しています。
なのでFG%というスタッツに2Pシュートと3Pシュートは含まれていても、当然フリースローの要素は含まれていません。
TS%の場合は2Pシュートと3Pシュートだけでなくフリースローも考慮に入れることによって、FG%では知ることができない部分まで導き出しているということなんです。
つまりTS%は「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮してシュート効率を測る指標」というテーマを持ったスタッツなんです。
ひとまずはTS%がこういったテーマ持っているとざっくり頭に入れたところで、次はスタッツの計算方法について確認していきましょう。
計算方法
スタッツの計算を自力でする機会なんて殆ど無いとは思いますが、このスタッツを理解する為に計算方法も見ておきたいと思います。
TS%は以下の計算式で求めることができます。*1 *2 *3
一見シンプルな計算式にも見えますが、よく見てみると中身は意外に複雑です。
というのもこれは単なる「確率」を計算しているのというよりむしろ、攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているというイメージの計算式なんです。
前回の解説記事ではこの辺りの詳細を割愛していました。
TS%というスタッツしっかり理解するためにも、この記事で計算式を一つ一つ紐解いていきます。
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- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
計算式を紐解く
ここではTS%の計算式を紐解いていき、どのようにスタッツのテーマが落とし込まれているのかという全体像を把握します。
「True Shooting percentage」「分解して考える」というポイントで確認していきましょう。
True Shooting percentage
そもそもTS%の計算式を複雑にしている原因の一つは"True Shooting percentage"(真のシュート確率)という名称にあると筆者は感じています。
スタッツにも数字にも疎い筆者が「シュート確率」と聞けば、まずFG%の「成功数/試投数」といった一般的な確率を想像します。
しかしTS%の計算式見てみると、FGA、FTA(シュートの数)だけでなくPTS(得点)が混在しています。
分母は得点で、分子には試投数と謎の0.44。
そうなってくるとコレが「シュート確率」だなんて言われてもイマイチ納得できません。
なので前項でも紹介したように、まずはTS%が単なる「確率」を計算しているというよりむしろ、攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているというイメージ・考え方を頭に入れておくことが重要なんですね。
分解して考える
計算式のイメージを頭に入れたところで、ここからは計算式を分解してそれぞれの部分について考えてみましょう。
FGA+0.44×FTA
FGA+0.44×FTA というのはざっくりいうと「シュートで終わった攻撃の回数」を表しています。
0.44という謎の数字が出てきましたが焦らず紐解いていきましょう。
先述の通りバスケットボールのシュートには大きく分けてFG(2P、3P)とFT(フリースロー)の2種類がありました。
では「シュートで終わった攻撃の回数」を求めたいのならFGA(FG試投数)とFTA(FT試投数)を合計すればいいと言いたいところですが、そう単純ではありません。
というのもフリースローは状況に応じて与えられる本数が異なりますので、1回の攻撃あたりの試投数には1本 or 2本 or 3本の場合があります。
そうなると単に「FTA」=「1回の攻撃」と考えるわけにはいかないんですね。
かなり複雑ですので詳細は割愛しますが頭のいい人が考えた結果、統計的に「FTA×0.44」=「1回の攻撃」というのが現在の一般的な考え方とされています。
なので FGA+0.44×FTA というのはフィールドゴールで終わった攻撃の回数、フリースローで終わった攻撃の回数の2つを合計して「シュートで終わった攻撃の回数」を求めているということなんです。
ひとまずこの FGA+0.44×FTA という部分が「シュートで終わった攻撃の回数」を表しているということが分かりました。
2×(FGA+0.44×FTA)
先ほどの FGA+0.44×FTA つまり「シュートで終わった攻撃回数」に2をかけていますね。
この2というのは2Pシュートのことです。
なので 2×(FGA+FTA×0.44) というのは、「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」を表しているわけです。
これで分子と分母がともに得点を表していることが分かりましたので、計算式の全貌が見えてきました。
分解したそれぞれの部分を踏まえて全体を見てみると、「実際の得点」を「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」で割っていることが分かりました。
つまり「実際の得点」が「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」に比べてどれくらい取れているのかを計算することによって、シュート効率(=得点能力)を導き出しているというわけなんです。
ここでようやくTS%というものが単なる「確率」を計算しているのではなく、「シュート効率」を導き出しているという考え方に到達しましたね。
調べると意外に複雑でスルーしてしまいがちですが、それぞれの部分を一つ一つ紐解くことでこの計算式がスタッツの持つテーマに帰結していることを理解できたと思います。
次の項では、TS%の計算式を調べた時によくある疑問点や注意点についても解決しておきたいと思います。
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- "TS%"という名称に注意
- 「確率」よりむしろ「シュート効率」
- FGA+0.44×FTA =シュートで終わった回数
- 分母は「攻撃が全て2Pだった場合の得点」
- 「実際の得点」と比較する
よくある疑問点と注意点
ここまでで計算式の各部分と全体像については把握できましたが、この式にはまだ疑問点が残ります。
最後にその辺りの疑問点・注意点について「本当に3Pを反映しているか」「0≦TS%≦100ではない」というポイントでしっかりと解決しておきましょう。
本当に3Pを反映しているか
計算式の内容がちゃんとスタッツの持つテーマに帰結しているということを何となく把握できましたが、まだ疑問が残っている方も多いはず。
それは分母の「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」という部分。
TS%のテーマは「2Pシュート、3Pシュート、フリースローを考慮したシュート効率を計る指標」です。
にも関わらず計算式の分母が「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」で本当にいいんでしょうか。
3Pシュートの要素はどこに行ってしまったのでしょうか。
筆者はこの計算式を知ったときに、3Pシュートの要素がどこにあるのか分からず納得できませんでした。
ですが分母は「攻撃が全て2Pシュートだった場合に取れる得点」でいいんです。
肝になっているのはこのTS%というスタッツが攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているところです。
例として架空の選手2人のスタッツを見てみましょう。*4
2人のFG、FGA、FT、FTA、それぞれ同じ数です。
唯一違うのは、選手AのFGが全て2Pシュートであるのに対し、選手Bの場合は3Pシュートも含まれている点。
この2人のスタッツを計算式に当てはめてTS%を算出するとどうなるでしょう。
そうなんです。ご覧の通りTS%にはしっかりと3Pシュート分の付加価値が乗っているんです。
よくできたスタッツですね。
このように一見すると計算式の中に3Pシュートが考慮されていないように思えますが、得点を元にシュート効率を導き出すことによって「シュートの価値の違い」もしっかり反映されてるんです。
フリースロー1点の価値についても同様ですね。
これで「本当に3Pを反映しているか」という疑問は無事解決しました。
0≦TS%≦100ではない
得点を元に計算することで、それぞれの「シュートの価値の違い」を反映したシュート効率が導き出せているのは分かりました。
ですがそれに伴って少し注意しなければいけない問題が生じています。
鋭い方は既にお気づきかもしれませんが、実際に2019-20シーズンに起こった例で見ていきましょう。
これは2019年12月10日に行われたアトランタホークス戦でマイアミヒートのダンカン・ロビンソンが記録したスタッツです。
ご覧の通りロビンソンはこの試合でTS%106.3という数字を叩き出しました。
この例からも分かるようにTS%の最大値は100ではないんですね。
TS%の範囲は 0≦TS%≦150、つまり最大で150の場合があるということなんです。
なかなかお目にかかれませんが「3Pシュートだけを打ってそれを全て決めた場合」にはTS%が150になります。
もしTS%というスタッツについてよく知らずに、シュート確率が150%と言われたらピンときません。
しかしTS%が単なる「確率」でなく攻撃回数と得点を元に「シュート効率」を導き出しているものだという考え方を理解していれば問題ありませんね。
これらの疑問点や問題点までを理解してやっと筆者はTS%の計算方法について納得できました。
かなり長くなりましたが、TS%の計算式についてなんとなく理解できましたでしょうか。
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eFG%との違い
今回紹介したTS%によく似た「eFG%」というスタッツとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
どちらもNBAを理解する上で重要なスタッツですので、是非あわせてご覧ください。
- 得点を元にすることでシュートの価値も反映
- TS%の範囲は 0≦TS%≦150
まとめ
今回はTS%の計算式について詳しく解説しました。
なるべく丁寧に解説してみるとかなり長くなってしまいましたが、これがTS%のテーマ、考え方、計算方法です。
計算式を覚える必要は全くありませんが、一連の考え方をしっかり納得した上でスタッツを理解することが重要だと思います。
今回の記事がNBAをより楽しむ上で少しでも役に立てば幸いです。
ではここで今回解説した内容を改めておさらいしておきましょう。
- TS%はオフェンスを評価する指標の一つ
- FGだけでなくFTも考慮している
- 攻撃回数と得点を元にシュート効率を測る
- "TS%"という名称に注意
- 「確率」よりむしろ「シュート効率」
- FGA+0.44×FTA =シュートで終わった回数
- 分母は「攻撃が全て2Pだった場合の得点」
- 「実際の得点」と比較する
- 得点を元にすることでシュートの価値も反映
- TS%の範囲は 0≦TS%≦150
最後に
今回解説したTS%に基づいて「NBA史上最もシュート効率が高い選手」などもランキングで紹介していますのでこちらも合わせてご覧ください。
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
→「用語で解るNBA」カテゴリーの記事一覧
(参考)
https://www.basketball-reference.com/
https://fansided.com/2015/08/31/nylon-calculus-101-true-shooting-percentage/
https://bleacherreport.com/articles/1039116-understanding-the-nba-explaining-advanced-offensive-stats-and-metrics