八村塁選手が、日本バスケットボール協会とトム・ホーバスヘッドコーチを批判した発言が大きな波紋を呼んでいます。
これまで日本代表を牽引してきた彼が、協会とヘッドコーチを批判する背景には一体どんな理由があるのでしょうか。
ということで今回の記事では、八村塁選手が日本バスケットボール協会とトム・ホーバスヘッドコーチを批判する3つの理由について解説したいと思います。
日本代表復帰の可能性なども詳しく見ていきましょう。
押さえておきたいポイント
"八村塁が協会とホーバスHCを批判する3つの理由"を理解するために、押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- 八村塁はどんな発言をした?
- SNSでも批判的な投稿をした?
- なぜ協会とホーバスHCを批判するの?
- その背景にはどんな出来事があった?
- 今後日本代表に復帰する可能性は?
では、これらの疑問をしっかりと解決できるように、"八村塁が協会とホーバスHCを批判する3つの理由"について紹介していきます。
八村塁選手の「協会批判」騒動について
まずは、今回の協会批判騒動を振り返っておきましょう。
会見での発言や、SNSでの投稿などをまとめます。
会見でバスケ協会とホーバスHCを批判
2024年11月13日(現地時間)、ロサンゼルス・レイカーズ対メンフィス・グリズリーズ戦の試合後に行われた記者会見で、八村選手から日本バスケットボール協会とトム・ホーバスヘッドコーチに対する批判的な発言が飛び出しました。
この発言は、一部で日本代表との決別宣言とも受け取られ、バスケットボール界のみならず日本中で広く注目を集めています。
会見で八村選手が批判した内容は、主に以下の3点です。
|協会の拝金主義的な姿勢
- 八村選手は、日本バスケットボール協会の活動が「金の目的」に偏っていると指摘
|トム・ホーバスHCの続投への批判
- 男子プロチームでの指導経験を持つ人物が、日本代表のヘッドコーチになるべきと主張
|協会の決定プロセスへの不信感
- 今回のトム・ホーバスHC続投や、そこに至るまでの経緯に対する失望を表明
これまでメディアでの表立った批判を控えてきた八村選手が、珍しく公に不満を表明した発言として大きな話題になり、さまざまなメディアでも取り上げられる事態に。
この発言により、日本バスケ界が直面する課題が改めて浮き彫りとなっています。
SNSでは批判的な投稿をリポスト
日本バスケットボール協会やトム・ホーバスヘッドコーチに対する批判は、会見だけにとどまりませんでした。
会見後、自身のX(旧Twitter)アカウントでも一般人の投稿をリポストする形で批判を続け、これがさらに大きな話題を呼んでいます。
八村選手がリポストした投稿の内容は、主に以下の5点です。
|ホーバスHCの発言への疑問
- 続投要請を受ける前に「パリ五輪メンバー全員と話し、皆がポジティブだった」と語ったが、実際には八村選手とは話していなかったのではないか、という指摘
|協会への批判に共感
- 八村選手がホーバスHC続投に異を唱えたにもかかわらず協会が対応しなかった点や、男子日本代表の金儲け主義に対する批判に共感し、支持する内容
|ホーバスHCへの評価
- 怒りやマイクロマネジメントが目立つ指導スタイルに対する批判と、八村選手からは「二流の指導者」と判断されたのではないかという意見
|男子バスケ界隈の拝金主義
- 日本国内のバスケブームは代理店やテレビ局の作為的な演出によるもので、その商業主義に嫌気が差して選手が離れる現状を批判
|代表選手の実力への注目
- 日本代表の成功はホーバスHCの手腕というよりも、現在の選手層が偶然にも充実していることに大きく依存しているという意見
このリポストは、バスケットボールファンを中心に賛否を巻き起こしました。
一部では「勇気ある行動」と評価される一方で、一般人の投稿を引用する形で批判を展開したことについて疑問の声も上がっています。
では、八村選手が協会やヘッドコーチを批判するに至った理由は何だったのでしょうか?
次の章では、その背景にある3つの理由について詳しく解説します。
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協会とホーバスHCを批判する3つの理由
会見から数日がたった現在、八村選手はこのことについて改めて語ることはしていませんが、国内外の報道などから少しずつその背景にあった理由が見えてきました。
特にスポーツライター宮地陽子さんの書いた記事では、かなり詳しい内情にまで言及されています。
それらの報道を参考に、ここでは「協会とホーバスHCを批判する3つの理由」を紐解いてみましょう。
会見で出た「金の目的」発言の真意とは
八村塁選手が会見で語った「金の目的」というフレーズ。
その発言の背景には、2024年7月に行われたパリ五輪直前強化試合での出来事が関係しているようです。
八村選手は、オリンピックに向けて最高のコンディションを整えるため、その強化試合には出場できないということを協会へ事前に伝えていました。
しかし、協会が欠場を正式に発表したのは、試合当日の7月5日。
→ 『SoftBank CUP 2024 (東京大会)』八村塁選手欠場に関して | 公益財団法人日本バスケットボール協会
さらに、そのプレスリリースには「JBAとして、八村選手のコンディション調整を優先し東京大会での出場は見送る判断をしました」とだけあり、八村選手が事前に出場できないことを伝えていたとは汲み取れないような内容となっています。
もう一人のNBA選手である渡邊雄太選手も怪我で欠場していたことから、協会が放送局やスポンサーへの影響を懸念し、八村選手欠場の発表を遅らせたのではないかと指摘しているわけです。
オリンピックに向けて全力で準備を進める中で、選手を軽視するような対応に不満があったことはもちろんのこと、自分を目当てに会場まで観戦に来てくれるファンへの責任も感じていたのかもしれません。
実際、八村選手はその試合に出場はしなかったものの、試合前に単独でウォームアップを行い、観客にダンクシュートを披露する場面も見られました。
近年、日本では、映画『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒット、日本人NBA選手たちの活躍、代表チームの快進撃などを背景に、バスケットボール熱がこれまでにないほど高まっています。
八村選手自身も、バスケットボールが盛り上がることや、スポンサーからの収益が増えること自体を否定しているわけではありません。
むしろ、学生時代から日本代表のスター選手として、ひいては日本バスケットボール界の顔としてプレーしてきた八村選手は、「日本のバスケットボールを強くしたい」「未来の子どもたちのために貢献したい」という思いをひときわ強く抱いている選手です。
本来であれば喜ばしいはずの盛り上がりの中であっても、選手の努力やファンの期待を軽視し、商業的な優先順位が目立つ協会の対応に対して、八村選手は違和感を覚えたのではないでしょうか。
11月26日 追記
11月24日に行われた囲み取材で、八村選手は次のように語りました。
「こうやって日本代表は活動費が必要だと言ってる中、その活動費は本当にどこに使われてるのかなって話なんですよね」
「彼らがやってるのは、僕からしたらプレイヤーファーストじゃなく、自分たちの利益になることを先にやって、そのお金を何に使ってるか僕はわからないです」
「子供たちが見ていて、僕もそういうふうになりたい、私もそういうふうになりたい、って思うような日本代表では僕はないと思います」
やはり、選手たちの活躍によって得られた収益が十分に還元されず、それが結果的に日本バスケットボールの未来に悪影響を及ぼすことへの懸念が、不信感の原因となっていたようです。
ホーバスHCの指導スタイルに対する批判
八村選手は会見で、「男子日本代表のトッププレイヤーには、男子バスケットボールを深く理解し、プロとしての指導経験があるコーチがふさわしい」という主旨の発言をしました。
この言葉から、八村選手が、トム・ホーバス氏は男子日本代表の指導者として適任でないと考えていることが読み取れます。
ホーバスヘッドコーチといえば、Wリーグでコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞し、東京オリンピックでは女子日本代表を銀メダルに導くなど、女子バスケットボール界で確固たる実績を持つ名将です。
しかし、男子プロチームの指導経験がないことから、男子日本代表チームを率いる指導方針について疑問視する声も一部で挙がっていました。
八村選手がSNSで「いかにも女子の指導者」という内容の投稿をリポストしたことや、「怒りすぎ」「マイクロマネジメント」と指摘している点からも、ホーバスヘッドコーチの指導方針に対する不満がうかがえます。
ゴンザガ大学、ワシントン・ウィザーズ、ロサンゼルス・レイカーズと、世界トップレベルの指導を受けてきた八村選手からすれば、ホーバスヘッドコーチの細部まで干渉する指導法や、選手に対する叱責、練習量の多さなどに不満を感じたのかもしれません。
→ マイクロマネジメントに陥らず部下に手を差し伸べる方法 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文
八村選手の批判がある一方で、ホーバスヘッドコーチは、他の日本代表選手たちからは信頼が厚いとも報じられており、実際これまでも選手との信頼関係を重視した指導スタイルで結果を残してきました。
しかし、NBA選手である八村選手は、リーグの労使協定によって代表チームへの参加制限もありますので、コーチとの関係性を築く機会がかなり限られていて、信頼関係をもとにした指導スタイルを受け入れることはなかなか難しいでしょう。
NBAでも、スター選手がコーチの戦術や指導方針を公に批判することはありますが、その場合は最終的にどちらかがチームを去るケースがほとんどです。
男子日本代表の強化を目指す中で、両者のビジョンの相違が今後どのように解決されていくのか、現段階ではまだ先行きが不透明な状態です。
11月26日 追記
11月24日に行われた囲み取材で、八村選手は次のように語りました。
「練習の中身もそうですけど、プロの試合で勝てるやり方ではないなと思いますね」
「僕が世界でやって見てる中で、全然、世界のレベルの練習の仕方ではないですし」
また一部報道によると、練習時間の長さや、八村選手の食事内容に対する発言が、ホーバスヘッドコーチとの間に確執を生む要因になった可能性があるようです。(※ 真偽不明)
協会への失望・ホーバスHCへの不信感
八村塁選手とトム・ホーバスヘッドコーチ、バスケットボール協会との関係には、以前から不協和音が聞こえていました。
そのきっかけとなったのが、2023年9月に行われたホーバスHCの記者会見での発言です。
会見で、八村選手がパリオリンピックに出場する可能性について問われた際、ホーバスヘッドコーチは「やりたいなら彼から声をかけてくればいい。私たちのスタイルは変わらない。彼が来るならウチのバスケットをやらせます。」という主旨の発言をし、今の日本代表に八村選手は必要ないとも取れるようなコメントを残しています。
この発言は、後に「母国語ではない日本語で語った際に誤解を生んだ」として、協会が異例の訂正コメントを発表する事態に至りました。
→ バスケットボール男子日本代表チーム 八村塁選手の代表参加に関するトム・ホーバスHCの補足コメント発信について | 公益財団法人日本バスケットボール協会
確かに、八村選手抜きでオリンピック出場権を勝ち取った直後の会見ですので、現メンバーの成果を称える意味も込められていたのかもしれませんが、これが八村選手にとって快い内容でなかったことは明白です。
実際、この一件を通じて、八村選手や彼のエージェントは、ホーバスヘッドコーチへの不信感を深めたとも言われています。
また、八村選手がSNSで「トム・ホーバスの続投に異を唱えたが協会は聞き入れなかった」という内容の投稿をリポストしたことから、協会に対する失望感も強まっているのでしょう。
前述の強化試合に関する対応や、「日本のバスケットボールを強くしたい」という強い思いが協会に受け入れられなかったことなどが重なり、このような信頼関係の悪化につながったと考えられます。
一方で、協会やホーバスヘッドコーチにも、日本バスケットボール界の発展を目指した独自の考えや努力があることは確かで、どちらか一方を一概に批判することはできません。
それでも、ファンとしては両者の溝が少しでも解消され、共通の目標である「日本のバスケットボールのさらなる発展」が実現されることをただただ願うばかりです。
11月26日 追記
11月24日に行われた囲み取材で、八村選手は次のように語りました。
「そもそもJBAの中では、オリンピックが終わった後に彼との契約は切るという話をしてたので、僕はそういうつもりでずっといたんですけど」
「彼らが言ってることは正しくないというか、正直、本当のこと言ってないなと思いますね」
「コーチが決める前に選手一人ずつに話したっていう話をしたらしいですけど、僕はコーチとも話してないですし、JBAとも話していないです」
この発言から推測すると、八村選手には前々から、パリオリンピック終了後にホーバスヘッドコーチが解任される予定だと伝えられていた可能性があります。
また、ホーバスヘッドコーチや協会がこれまでに発表してきたコメントの中には、事実とは異なる部分が含まれていたとされ、そうした点が八村選手の不信感をさらに強める結果となったようです。
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八村選手が日本代表に復帰する可能性
では、今後八村選手が日本代表に復帰する可能性はあるのでしょうか。
会見での発言、ホーバスヘッドコーチの契約状況から、八村選手の代表復帰について考えます。
会見での発言は「代表決別宣言」か
八村選手は、会見で「彼らが決めたことなので。僕としてはそういう姿勢でやっているんだなと思うんで。(中略)僕もNBAで頑張って、日本のバスケが強くなるように頑張っていきたいなと思います。」と語りました。
この発言は一見すると前向きなものに聞こえる一方で、「これからはNBAに専念する」という意向を示しているとも受け取れる内容です。
実際、八村選手は現在NBA6年目を迎え、名門ロサンゼルス・レイカーズのスターターとして確固たる地位を築いています。
そんな彼が世界最高峰の舞台で活躍する姿は、日本の子どもたちにとって大きな夢や目標となっていることは間違いありませんし、日本代表としての活動が途絶えたとしても、NBAでのプレーを通じてバスケットボールの魅力を伝える役割は続けられるでしょう。
しかし、今回の八村選手の発言をきっかけに、協会が選手の意見をどのように受け止め、対応していくか次第で、この状況が改善される余地はまだ残されているのかもしれません。
八村選手の会見から5日後の11月19日、Bリーグの島田慎二チェアマンが「代理人を通じて事実確認を行っている」と説明しました。
→ 八村の波紋呼ぶ発言に「この状況が残念」とBリーグ・島田チェアマン 代理人通じて事実確認中 近日中に日本協会から説明へ(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
2024年9月に、女子日本代表の馬瓜エブリン選手らが、東野智弥技術委員長を名指しで批判した件も記憶に新しいように、日本代表チームと協会全体との間にある何らかの構造的な問題が浮き彫りになってきています。
国を背負って戦う選手たちが、最善の状態でプレーする環境を整えられるかどうかが、八村選手の今後の日本代表活動にも大きな影響を与えるでしょう。
11月26日 追記
11月24日に行われた囲み取材で、八村選手は次のように語りました。
「そういう方針でいっている日本代表ではプレーしたくありません」
「もちろんです、やりたいです、もちろんです」
「オリンピックもLAでやるってことなんで、僕ももちろんそれをやりたいですけど、それはもうわかんないですね」
八村選手自身は日本代表への参加意欲を持っているようですが、協会への不信感が解消されない限り、代表復帰は難しい状況にあるようです。
ホーバス体制は2028年まで継続の見込み
今回の会見での八村選手の発言を受けて、ホーバスヘッドコーチおよび日本バスケットボール協会の今後の方針にも注目が集まっています。
八村選手の会見が行われる約1週間前に実施された、ホーバスヘッドコーチの契約継続発表に際して、日本バスケットボール協会会長の三屋裕子氏は、「ロサンゼルス2028オリンピックまでを視野に入れて、続投を依頼しました」と明言しました。
→ 男子日本代表:トム・ホーバスヘッドコーチ 契約継続会見開催 | 公益財団法人日本バスケットボール協会
このことから、ホーバス体制が少なくとも2028年のロサンゼルス五輪まで続く見込みであることが伺えます。
八村選手の会見があったとはいえ、契約を継続したばかりのホーバスヘッドコーチを急に解任するような可能性は低いと言えるでしょう。
両者の関係が今後も修復されないままであれば、八村選手が2028年のロサンゼルス五輪に参加しなかったとしても不思議ではありません。
その場合、八村選手が次に日本代表としてプレーする機会は、2028年のロサンゼルス五輪が終わったあと、次のブリスベン五輪を目指す活動になる可能性もあります。
ただ、八村選手の年齢は、2028年のロサンゼルス五輪のときに30歳、2032年のブリスベン五輪のときには34歳です。
バスケットボール選手としての経験と身体能力がピークを迎えるのは、おそらくロサンゼルス五輪の頃でしょう。
そう考えると、協会側としても、現行体制での成果を期待しつつ、ロサンゼルス五輪に八村選手が参加してくれることを引き続き望んでいることは間違いありません。
協会は、近日中に一連の騒動についての説明をするとしており、その内容と対応が注目されます。
11月26日 追記
11月20日、日本バスケットボール協会の渡邊信治事務総長が囲み取材に応じ、次のように語りました。
「そういった選手のこういった発言ですので、我々も非常に重く受け止めております」
「はっきり言うと我々の中でのミスコミュニケーションがあったり、そういったところで彼に負担をかけてしまったというところがある」
「2028年に向かってトム・ホーバスヘッドコーチの体制でやりたいということで一本化したものを理事会で承認しておりますので、この決定は変わることがない」
11月13日の会見で八村選手が語った内容について、協会の落ち度を認める姿勢を示しつつも、ホーバス体制への信頼とその継続の意思を改めて強調しています。
その後JBAは、11月24日に行われた八村選手の囲み取材での発言に関して、現時点では具体的な対応を取らない方針を明らかにしており、八村選手との問題解決の糸口はまだ見えていない状況です。
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