「リバウンド能力が高いNBA選手」と言われて誰を想像しますか?
2019-20シーズンを見てみると、渡邊雄太選手も出場した試合でチームメイトのヨナス・バランチュナス選手が1試合25リバウンドという素晴らしい成績を残しています。
この記録からも分かる通り、バランチュナス選手は間違いなく現役トップクラスのリバウンド能力を持った選手です。
では歴代のNBA選手の中で最もリバウンド能力が高かった選手は一体誰なのでしょう。
バスケットボールには、リバウンド能力を表す指標にTRB%というスタッツがあります。
歴代選手のTRB%を調べれば自ずと「NBA史上最もリバウンド能力が高い選手」が分かりそうですね。
というわけで今回は歴代の選手をキャリア通算TRB%でランク付けし、NBA史上最もリバウンド能力が高い選手TOP10を紹介したいと思います。
押さえておきたいポイント
"NBA史上最もリバウンド能力の高い選手"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- TRB%って何?
- どうやって計算するの?
- TRB%が高かったのは誰?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"NBA史上最もリバウンド能力の高い選手"を紹介していきます。
TRB%
まずはTRB%の概要をざっくりと紹介します。
「リバウンド」「TRB%とは」「計算方法」というポイントに注目して見ていきましょう。
トータルリバウンド
TRB(トータルリバウンド)というのは、文字通りチームや選手個人が獲得したリバウンドの総数のこと。
言い換えるならオフェンスリバウンドとディフェンスリバウンドの合計数ですね。
では今回のTRB%を理解するためにも「リバウンドが発生する状況」を改めて確認しておきましょう。
バスケットボールにおいてリバウンドというものを大きく分けると、図のように4つのパターンに分類できます。
なので仮に自チームのTRBの数を求めたい場合には、自チームのORB数とDRB数を合計すればいいんですね。
何を今更って感じですが、まずはこの図をしっかりと頭に入れた上で本題のTRB%について見ていきましょう。
TRB%とは
TRB%(Total Rebound Percentage)はチームや選手を評価する際に用いられる指標の一つです。
媒体によってはRB%やREB%と表記される場合もありますね。
試しに"TRB%"を検索するとこのような説明が出てきます。
Total rebound percentage is an estimate of the percentage of available rebounds a player grabbed while he was on the floor.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
Google翻訳によると「トータルリバウンドパーセンテージとは、プレーヤーがフロアにいる間に獲得する利用可能なリバウンドの割合の推定するもの」だそうです。
何となく言いたいことは分かりますが、これだけだとイマイチ納得できませんね。
なので具体的な例からこのスタッツを紐解いてみましょう。
- 八村塁のTRB%は11.1%だった
この文章を噛み砕いて説明すると...
- 八村塁は、出場しているとき、外れたシュートのうち11.1%をリバウンドにした
といった解釈になります。
TRB%というスタッツが何となく見えてきましたね。
スタッツを捉える為に重要なポイントは3つ
- 出場しているとき
- 外れたシュートのうち
- XX%をリバウンドにした
「外れたシュート」を言い換えると「実際取れたかどうかは別にして獲得可能だったリバウンドの数」と言えますね。
先ほどの図ではこの部分。
TRB%はそんな「獲得可能なリバウンド」に対して実際は「何本のリバウンドが取れるのか」という割合を示しているんです。
つまりTRB%は「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをリバウンドにできるか」で選手のリバウンド能力を測るというテーマを持ったスタッツなんですね。
まずはこのテーマを頭に入れて、次はスタッツの計算方法からTRB%を見ていきましょう。
計算方法
スタッツの計算を自力でする機会は中々ないとは思いますが、TRB%をより理解する為にも計算方法を紹介しておきたいと思います。
TRB%は以下の計算式で求めることができます。*1 *2 *3
一目でこのスタッツが嫌いになりそうな計算式です。
しかし複雑に見えるこの計算式も、実は先ほど紹介したスタッツのテーマを理解していれば簡単です。
TRB%は「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをリバウンドにできるか」で選手のリバウンド能力を測るものでした。
「出場しているとき」「獲得可能なリバウンド」「リバウンド」が計算式のどの部分に当てはまるのかさえ分かれば、この計算式の意味も自ずと見えてきます。
(Team TRB + Opp TRB)というのは先ほど図でも見た通り「実際取れたかどうかは別にして獲得可能だったリバウンド」のことです。
それぞれの部分が意味する内容を把握することで、この計算式がスタッツのテーマに帰結していることを理解できたと思います。
とりあえずはこの計算式が「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをリバウンドにできるか」というテーマを落とし込んだものだと何となく理解できればOKです。
ちなみにチーム全体のTRB%を求める場合には「出場しているとき」という部分を考慮しなくていいので、よりシンプルな計算式で求めることができます。
こちらも合わせて把握しておきましょう。
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- TRB%は選手やチームを評価する指標の一つ
- 獲得可能なリバウンドに対するTRBの割合で評価する
- 計算では出場時間も考慮している
キャリア通算TRB% 歴代TOP10
ではここから本題である「NBA史上最もリバウンド能力の高い選手」をキャリア通算TRB%でランク付けしていきます。
キャリア通算スタッツや概要とともにご確認ください。*4 *5 *6
第10位 Mel Daniels
- TRB%:19.26
- キャリア:1967〜1977
- TRB:14.9
- ORB:4.5
- DRB:10.4
- PTS:18.4
1960年代から70年代にかけてインディアナペイサーズなどで活躍したメル・ダニエルズが第10位にランクイン。
ダニエルズといえば通算リバウンド数でABA歴代トップの9494本を記録している殿堂入りプレーヤーです。
ルーキーシーズンからオールスターに7年連続で選出され、インディアナペイサーズに3度の優勝をもたらしました。
TRB%を見ても1年目から5年連続でリーグトップの成績を残しており、ABA史上最高のリバウンダーと評されています。
第9位 Larry Smith
- TRB%:19.3
- キャリア:1980〜1993
- TRB:9.2
- ORB:3.9
- DRB:5.3
- PTS:6.7
第9位は1980年からウォーリアーズなどで活躍したラリー・スミスがランクインしました。
203cmのスミスが並み居るビッグマンの中でこれだけリバウンドを量産したわけですから、いかに優れたリバウンダーだったのかが分かります。
2年目でリーグトップのTRB%21.4を叩き出し、その後もキャリア通算2回のシーズンリーダーに輝いています。
現役引退後はコーチとしても活躍し、アシスタントコーチを務めたヒューストンロケッツでは1994年、1995年のNBA連覇にも貢献しました。
第8位 Kevin Love
- TRB%:19.52
- キャリア:2008〜
- TRB:11.1
- ORB:2.8
- DRB:8.4
- PTS:18.2
第8位にはクリーブランドキャバリアーズに所属するケビン・ラブがランクイン。
ラブといえばインサイドでのポストプレーから3ポイントシュートまでこなすストレッチ4の代表格ともいえる選手です。
過去には5度のオールスターにも選出され、2010-11シーズンにはリバウンド王にも輝いています。
アウトサイドでのプレーが増えるにつれててオフェンスリバウンドの数は年々減少していますが、トータルのリバウンド数に大きな減少は見られません。
その背景には彼の安定したディフェンスリバウンドの能力があり、それが通算DRB%にもよく表れていますね。
第7位 Moses Malone
- TRB%:19.76
- キャリア:1974〜1995
- TRB:12.3
- ORB:5.1
- DRB:7.2
- PTS:20.3
1970年代から1990年代にかけて活躍した殿堂入りレジェンドのモーゼス・マローンが第7位にランクインしました。
マローンといえば強靭なフィジカルとリバウンド感覚を兼ね揃えた選手で、キャリア通算6度のリバウンド王に輝いています。
中でも特にオフェンスリバウンドの能力は傑出していて、通算ORB数ではNBA歴代1位の7382本という大記録も残しています。*7
歴代2位のアーティス・ギルモアで4816本。明らかに異次元ですね。
当然TRB%でも常に好成績を残しており、キャリアで4度リーグトップのTRB%を記録しました。
第6位 Dwight Howard
- TRB%:20.92
- キャリア:2004〜
- TRB:12.3
- ORB:3.5
- DRB:8.9
- PTS:16.8
ロサンゼルスレイカーズのドワイト・ハワードが第6位にランクイン。
リバウンド王を5回、最優秀守備選手賞を3回獲得しているハワードは、TRB%でも20.92という歴代トップクラスの成績です。
ここ数年は今一つ活躍することができずにチームを転々としていましたが、2019-20シーズンはレイカーズで再び存在感を発揮していますね。
出場時間が減っているので額面上はリバウンド数が少ないように見えますが、この高いTRB%を見れば彼の能力が未だに健在であることを思い知らされます。
第5位 Swen Nater
- TRB%:21.39
- キャリア:1973〜1984
- TRB:11.6
- ORB:3.4
- DRB:8.2
- PTS:12.4
1970年代から80年代にかけて活躍したビッグマンのスウェン・ネイターが第5位にランクインしました。
ネイターはABAでも数年間プレーしており、長身から繰り出すフックショットやリバウンドを武器に2度ABAオールスターに選ばれています。
1979-80シーズンにはNBAでもリバウンド王に輝き、ABAとNBAの両リーグでリバウンド王を経験した唯一の選手となりました。*8
TRB%を見てもキャリアのうち4シーズンでリーグトップの成績を残しています。
ちなみに彼の残した通算ORB%13.0、通算DRB%32.1という記録はともにABA史上歴代1位の記録です。
第4位 DeAndre Jordan
- TRB%:21.7
- キャリア:2008〜
- TRB:10.8
- ORB:3.2
- DRB:7.6
- PTS:9.5
NBAを代表するビッグマンのディアンドレ・ジョーダンが第4位に登場です。
ド派手なダンクやアリウープでの得点が多いジョーダンは、キャリア通算TS%で歴代No. 1の成績をマークしています。
リバウンドにおいても過去に2度リバウンド王に輝き、TRB%は2シーズンでリーグトップの数字を残しています。
特に2017-18シーズンのTRB%26.53という記録は、NBA歴代4位という素晴らしい成績です。
第3位 Reggie Evans
- TRB%:21.87
- キャリア:2002〜2015
- TRB:7.1
- ORB:2.5
- DRB:4.7
- PTS:4.1
第3位はシアトルスーパーソニックスやブルックリンネッツなどで活躍したレジー・エバンスです。
スタッツを見ても分かる通り得点で目立つことは多くありませんでしたが、ベンチから出場してディフェンスやリバウンドで貢献することの出来る選手でした。
2012-13シーズンにはリーグトップのTRB%26.67を記録。
これはNBA史上歴代2位のシーズンTRB%です。
ちなみにこの年エバンスはORB%とDRB%でもリーグトップの成績を残しています。
第2位 Dennis Rodman
- TRB%:23.44
- キャリア:1986〜2000
- TRB:13.1
- ORB:4.8
- DRB:8.4
- PTS:7.3
NBAを代表する稀代のリバウンダーデニス・ロッドマンが、キャリア通算TRB%ランキングの第2位にランクインしました。
やはり「ロッドマンといえばリバウンド」というくらい彼の代名詞ともなっているのがこのリバウンド能力です。
コート内外での振る舞いからは想像もつきませんでしたが、シュートの軌道や選手のクセを研究してリバウンド落下地点を予測する訓練も積んでいたそうですね。
その結果7度のリバウンド王、TRB%でも8年連続のシーズンリーダーに輝いています。
ブルズ時代やピストンズ時代の印象が強いロッドマンですが、彼のキャリアで最もTRB%が高かったのはスパーズに所属していた1994-95シーズンなんですね。
そのシーズンに記録したTRB%29.73という数字は、NBAの歴史上で最も高いシーズンTRB%として未だ塗り替えられていない大記録です。
1シーズンだけでなくキャリア通してこれだけの成績を残しているわけですから、改めてロッドマンのリバウンド能力の凄まじさを感じますね。
第1位 Andre Drummond
- TRB%:24.53
- キャリア:2012〜
- TRB:13.8
- ORB:4.8
- DRB:9.1
- PTS:14.5
現役選手のアンドレ・ドラモンドが、キャリア通算TRB%ランキングの映えある第一位に輝きました。
2019-20シーズンも断トツでリーグトップのTRB%26.0を記録しています。
間違いなく現在のNBAで最もリバウンド能力の高い選手ですね。
ちなみに通算DRB%では歴代1位、通算ORB%でも歴代2位の成績をマークしており、NBAの長い歴史の中でもトップのセンターであることがよく分かります。
しかしながら近年センターに機動力やシュート力が求められることも増え、ドラモンドでさえピストンズから半ば放出のような形でキャバリアーズにトレードされました。
このような素晴らしいスタッツを改めて見てみると、彼の能力を上手く活かせるチームで活躍してもらいたいとつくづく思いますね。
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まとめ
今回はTRB%に注目してNBA史上最もリバウンド能力の高い選手TOP10を紹介しました。
NBAにおいてTRB%というスタッツが記録され始めたのは1970-71シーズンからですので、このランキングにウィルト・チェンバレンら60年代のレジェンドが含まれていない点はご容赦下さい。
とはいえ今回紹介した選手たちがNBAを代表するセンターであるのは紛れもない事実です。
上位には現役選手もいますので、今後の変動にも注目していきたいと思います。
最後に
TRB%に基づいて歴代選手たちのシーズン毎のパフォーマンスについてもランキングで紹介していますのでこちらも合わせてご覧ください。
他にもこのブログでは様々な「ランキング」を紹介しています。
→「ランキング」カテゴリーの記事一覧
「用語で解るNBA」というカテゴリーではNBAの解説も投稿していますので是非覗いてみてください。
→「用語で解るNBA」カテゴリーの記事一覧
*1:TRB=個人のリバウンド数、Team TRB=自チームのリバウンド数、Opp TRB=相手チームのリバウンド数、MP=個人の出場時間、Team MP=自チーム全体の出場時間
*2:https://www.basketball-reference.com/about/glossary.htmlを参照
*3:媒体によっては異なる計算式を用いることもある
*4:今回の記事で紹介するスタッツは2020.7.1時点のBasketball-Reference.comを元に集計
*5:「TRB%=Total Rebound percentage」以下キャリア通算1試合あたりの「TRB=トータルリバウンド数」「ORB=オフェンスリバウンド数」「DRB=ディフェンスリバウンド数」「PTS=得点」
*6:通算成績にはABAでのキャリアもカウントする