以前このブログではORB%に注目してNBA史上最強のセンターTOP10を紹介しました。
そこでは選手のキャリア通算ORB%に基づいて歴代NBA選手をランク付けしましたが、当然それぞれの選手にもORB%が高かったシーズン、低かったシーズンが存在するわけです。
ではこれまでのNBAで最もORB%が高いシーズンを送った選手、言うなれば「最大瞬間風速を記録した選手」とは一体どのシーズン・どの選手なのでしょうか?
ということで今回は選手のシーズン毎のORB%に基づいて、歴代NBA選手のシーズンパフォーマンスTOP10を紹介したいと思います。
押さえておきたいポイント
"史上最高のORB%を記録した選手"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- ORB%って何?
- どうやって計算するの?
- ORB%が高かったのは誰?
- それはどんなシーズン?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、シーズンパフォーマンスについて紹介していきます。
ORB%
まずはORB%の概要をざっくりと紹介します。
「オフェンスリバウンド」「ORB%とは」「計算方法」というポイントに注目して見ていきましょう。
オフェンスリバウンド
そもそもオフェンスリバウンドとは、その名の通りオフェンス側が確保したリバウンドのことを指します。
本題であるORB%を理解するためにも、「オフェンスリバウンドが発生する状況」について改めて確認しておきましょう。
図のようにシュートが外れ、そのボールをオフェンス側が確保したときにオフェンスリバウンドは成立します。*1
何を今更って感じでしょうか。
ただこういった「オフェンスリバウンドになり得る状況」について確認しておくことが、後々ORB%の重要性を理解することに繋がっていきます。
まずはこの図を何となく頭に入れて、本題であるORB%について見ていきましょう。
ORB%とは
ORB%(Offensive Rebound Percentage)はチームや選手を評価する際に用いられる指標の一つ。
ディーン・オリーバー氏が名著『Basketball on paper』で提唱したFour Factors(オフェンスの効率を評価するにあたって重要な4つのスタッツ)の一つですね。
良いチームはこの"Four Factors"が優れているので、分析するならとりあえずコレを見ておけというくらい大事な要素とされています。
ではそんな重要なスタッツであるORB%とは一体どんなものなのでしょうか?
試しに"ORB%"を検索するとこのような説明が出てきます。
Offensive rebound percentage is an estimate of the percentage of available offensive rebounds a player grabbed while he was on the floor.
https://www.basketball-reference.com/about/glossary.html
Google翻訳によると「プレーヤーがフロアにいる間に獲得する利用可能なオフェンスリバウンドの割合の推定値」だそうです。
何となく言いたいことは分かりますが、これだけだとイマイチ納得できませんね。
なので具体的な例からこのスタッツを紐解いてみましょう。
- 今シーズン、ジョエル・エンビードのORB%は10.1%だった
この文章を噛み砕いて説明すると...
- 今シーズン、ジョエル・エンビードは、出場しているとき、自チームがミスしたシュートのうち10.1%をオフェンスリバウンドにした
といった解釈になります。
ORB%というスタッツが何となく見えてきましたね。
スタッツを捉える為に重要なポイントは3つ
- 出場しているとき
- 自チームがミスしたシュートのうち
- XX%をオフェンスリバウンドにした
「自チームがミスしたシュート」を言い換えると「実際取れたかどうかは別にして獲得可能だったオフェンスリバウンドの数」と言えますね。
先ほどの図ではこの部分。
ORB%はそんな「獲得可能なリバウンド」に対して実際は「何本のオフェンスリバウンドが取れるのか」という割合を示しているんです。
つまりORB%は「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをオフェンスリバウンドにできるか」で選手のリバウンド能力を測るというテーマを持ったスタッツなんですね。
このテーマを頭に入れて、次はスタッツの計算方法からORB%を見ていきましょう。
計算方法
スタッツの計算を自力でする機会は中々ないとは思いますが、ORB%をより理解する為にも計算方法を紹介しておきたいと思います。
ORB%は以下の計算式で求めることができます。*2 *3 *4
見ただけでも考えるのをやめたくなるような計算式ですね。
しかしこの一見複雑に見える計算式も、実は先ほど紹介したスタッツのテーマ理解していれば簡単です。
ORB%は「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをオフェンスリバウンドにできるか」で選手のリバウンド能力を測るものでした。
「出場しているとき」「獲得可能なリバウンド」「オフェンスリバウンド」が計算式のどの部分に当てはまるのかさえ分かれば、この計算式の意味も自ずと見えてきます。
(Team ORB + Opp DRB)というのは先ほど図でも見た通り「実際取れたかどうかは別にして獲得可能だったオフェンスリバウンド」のことです。
それぞれの部分が意味する内容を把握することで、この計算式がスタッツのテーマに帰結していることを理解できたと思います。
とりあえずはこの計算式が「出場しているとき、獲得可能なリバウンドのうちどれくらいをオフェンスリバウンドにできるか」というテーマを落とし込んだものだと何となく理解できればOKです。
ちなみにチーム全体のORB%を求める場合には「出場しているとき」という部分を考慮しなくていいので、よりシンプルな計算式で求めることができます。
こちらも合わせて把握しておきましょう。
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- ORB%はオフェンスを評価する指標の一つ
- 獲得可能なリバウンドに対するORBの割合で評価する
- 計算では出場時間も考慮している
歴代ORB%ランキング TOP10
ではここから本題である歴代センターのシーズンパフォーマンスTOP10を紹介していきます。
全選手をシーズン毎に集計し、同一選手であってもシーズン別でランク付けしています。
シーズンのスタッツや概要とともにご確認ください。*5 *6 *7
第10位 Chris Dudley('91-92)
- New Jersey Nets
- ORB%:18.45
- TRB:9.0
- ORB:4.2
- DRB:4.8
- PTS:5.6
第10位は1980年代から2000年代にかけてポートランドトレイルブレイザーズやニュージャージーネッツなどで活躍したクリス・ダドリーです。
ダドリーといえばシャキール・オニールにダンクされた後にボールを投げつけたシーンを思い浮かべる方も多いかと思いますが、彼のリバウンド能力の高さを忘れてはいけませんね。
このシーズンのORB数はキャリアハイの343本、ORB%でもリーグトップの18.45を記録しました。
ちなみにダドリーは通算ORB%でも歴代6位にランクインしており、キャリアを通じて安定したオフェンスリバウンド能力を発揮していたことが分かります。
第9位 Moses Malone('77-78)
- Houston Rockets
- ORB%:18.60
- TRB:15.0
- ORB:6.4
- DRB:8.6
- PTS:19.4
1970年代から1990年代にかけて活躍した殿堂入りレジェンドのモーゼス・マローンが第9位にランクインしました。
マローンといえば強靭なフィジカルとリバウンド感覚を兼ね揃えた選手で、通算6度のリバウンド王に輝いています。
この年チームとしては結果が振るわずプレーオフ進出を逃しましたが、個人としてはORB%でリーグトップの18.6を記録し、自身初のオールスターに選出されています。
素晴らしい成績とはいえ、あくまでこれは彼のキャリアでも序盤にあたるシーズン。
ここからマローンはNBAの歴史に残るオフェンスリバウンドの数々を積み重ねてゆくことになります。
第8位 Dennis Rodman('96-97)
- Chicago Bulls
- ORB%:18.85
- TRB:16.1
- ORB:5.8
- DRB:10.2
- PTS:5.7
第8位にはNBAを代表する稀代のリバウンダーデニス・ロッドマンがランクインです。
これは黄金期のブルズが5度目のNBAチャンピオンに輝いたシーズンですね。
ORB数はリーグトップの320本、ORB%でもリーグトップの18.85を記録しました。
ちなみにこのシーズンのロッドマンはORB%だけでなくDRB%でもリーグトップの成績を記録しており、彼がリーグNo. 1のリバウンダーとして君臨していたことがよく分かります。
第7位 Moses Malone('78-79)
- Houston Rockets
- ORB%:19.18
- TRB:17.6
- ORB:7.2
- DRB:10.5
- PTS:24.8
第9位で紹介したシーズンの翌年、1978-79シーズンのモーゼス・マローンが第7位にランクインです。
前年のシーズン終盤に負った怪我から復帰したマローンはあらゆるスタッツを大幅に向上させ、この年のシーズンMVPに輝きました。
特にオフェンスリバウンド能力の開花は著しく、ORB数は380本から587本、ORB%でも18.6から19.18にまで向上させています。
このシーズンのORB578本という数字は、NBA史上No. 1のシーズンORB数記録として未だに破られていません。
第6位 Moses Malone('79-80)
- Houston Rockets
- ORB%:19.60
- TRB:14.5
- ORB:7.0
- DRB:7.5
- PTS:25.8
さらに第6位には1979-80シーズンのモーゼス・マローンが登場しました。
大きな飛躍を見せた前年と比べると出場時間が若干減ったことで、オフェンスリバウンドの本数自体は少なくなっていますね。
少なくなったとは言ってもNBA史上2番目に多い573本という大記録なんですが。
ORB数が減ってもORB%をさらに向上させているわけですから、より効率よくオフェンスリバウンドが獲得できていたということが分かります。
第5位 Jayson Williams('95-96)
- New Jersey Nets
- ORB%:19.78
- TRB:10.0
- ORB:4.3
- DRB:5.8
- PTS:9.0
1990年代にニュージャージネッツなどで活躍したジェイソン・ウィリアムスが第5位にランクインです。
ウィリアムスといえばフィジカルなプレーが持ち味で、インサイドに激しくアタックできるパワーフォワード。
このシーズンにはその持ち味を存分に生かして、ORB%19.78という素晴らしい成績を残しています。
特筆すべきは彼のリバウンドスタッツが、キャリア後半になるにつれ大幅に上昇している点です。
1年目〜4年目のORB%が11.8だったのに対し、5年目〜9年目を見てみると18.9にまで伸ばしています。
キャリア序盤はベンチからの出場がほとんどでしたが、この頃にはインサイドでの強さを買われすっかりスターターとして定着していました。
第4位 Moses Malone('76-77)
- Houston Rocketsなど
- ORB%:19.79
- TRB:13.1
- ORB:5.3
- DRB:7.7
- PTS:13.2
なんとモーゼス・マローン4度目の登場です。
通算ORB数が歴代No. 1ですから、当然と言えば当然の結果なのかもしれませんね。
このシーズンはABAとNBAが合併したばかりで、マローンはシーズン序盤にバッファローブレーブスからヒューストンロケッツにトレードで移籍しています。
ここまでに登場したシーズンと比べるとORBの数自体は随分少ないシーズンですね。
しかし30.6分という出場時間の中でオフェンスリバウンドを量産したことによって、これだけ高いORB%に繋がっています。
こういった結果を見るとやはりオフェンスリバウンドの能力を見極めるためには、ORB数だけでなくORB%にも目を向ける必要があると感じますね。
第3位 Dennis Rodman('95-96)
- Chicago Bulls
- ORB%:19.89
- TRB:14.9
- ORB:5.6
- DRB:9.3
- PTS:5.5
ブルズが当時の最高記録シーズン72勝という大記録を打ち立てたシーズンですね。
歴代最強とも評されるチームにリバウンドとディフェンスで大きく貢献したロッドマンは、その年のリバウンド王と最優秀守備選手賞の2冠に輝いています。
もちろんORB%でもリーグトップの19.69を記録。
ロッドマンはこのシーズンを含めて、キャリアのうち7シーズンでリーグトップのORB%を記録しています。
第2位 Jayson Williams('97-98)
- New Jersey Nets
- ORB%:20.54
- TRB:13.6
- ORB:6.8
- DRB:6.8
- PTS:12.9
第5位にも登場したジェイソン・ウィリアムスが惜しくも第2位に。
これだけのリバウンド能力がありながらも、彼がORB数、ORB%でリーグNo. 1を獲得したのはこのシーズンだけなんです。
というのも同時期には常にロッドマンがリーグトップのリバウンド記録を達成していますので、どうしてもその影に隠れてしまうんですね。
ただこのシーズンはご覧のように素晴らしいスタッツを残し、自身初のオールスターにも選出されました。
引退後の事件などでマイナスなイメージもありますが、こういったオフェンスリバウンドのパフォーマンスが歴史に残る素晴らしいものだったのは間違いありません。
第1位 Dennis Rodman('94-95)
- San Antonio Spurs
- ORB%:20.83
- TRB:16.8
- ORB:5.6
- DRB:11.2
- PTS:7.1
栄えある第1位には、通算ORB%でも歴代1位のデニス・ロッドマンが輝きました。
ブルズやピストンズ時代の印象が強いロッドマンですが、彼のキャリアで最もORB%が高かったのはスパーズに所属していた1994-95シーズンなんです。
チームとの対立や怪我もあって49試合の出場にとどまったものの、規定の最低出場時間は何とか満たしていますね。*8
この年に記録したORB%とDRB%はともにキャリアハイの数字で、まさに彼のキャリアで最も効率よくリバウンドを獲得したシーズンと言えます。
コート内外でのスキャンダラスなイメージも強いロッドマンからは想像もつきませんでしたが、シュートの軌道や選手のクセを研究してリバウンド落下地点を予測する訓練も積んでいたそうです。
そういった見えない部分での努力が、彼のオフェンスリバウンド能力に繋がっているということでしょう。
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まとめ
今回はORB%に注目してNBA選手のシーズンパフォーマンスを振り返りました。
TOP10といっても結果的には4名しか出てきませんでしたね。
やはりロッドマンや、マローンといったレジェンドのリバウンド能力は、ORB%というスタッツ一つとっても異次元のものでした。
今回紹介したTOP10以下のランキングも載せておきますので、興味がある方はそれぞれの選手についても調べてみて下さい。
最後に
他にもこのブログでは様々な「ランキング」を紹介しています。
→「ランキング」カテゴリーの記事一覧
「用語で解るNBA」というカテゴリーではNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。
→「用語で解るNBA」カテゴリーの記事一覧
*1:ディフェンス側がボールに触りアウトオブバウンズになった場合もオフェンスリバウンドとしてカウントされる
*2:ORB=個人のオフェンスリバウンド数、Team ORB=自チームのオフェンスリバウンド数、Opp DRB=相手チームのディフェンスリバウンド数、MP=個人の出場時間、Team MP=自チーム全体の出場時間
*3:https://www.basketball-reference.com/about/glossary.htmlを参照
*4:媒体によっては異なる計算式を用いることもある
*5:今回の記事で紹介するスタッツは2020.7.1時点のBasketball-Reference.comを元に集計
*6:「ORB%=Offensive Rebound percentage」以下キャリア通算1試合あたりの「PTS=得点」「TRB=トータルリバウンド数」「ORB=オフェンスリバウンド数」「DRB=ディフェンスリバウンド数」
*7:通算成績にはABAでのキャリアもカウントする
*8:規定はhttps://www.basketball-reference.com/about/rate_stat_req.htmlを参照