2019-2020シーズン開幕から約1ヶ月が経過したNBAですが、そんな中で今最も勢いがあるチームの一つにダラス・マーベリックスがあげられます。
マーベリックス躍進の原動力となっているのは、昨シーズンの新人王ルカ・ドンチッチです。
若干20歳という若さでトリプルダブルを量産し、シーズン序盤でMVP候補にあげられるほどの様々な記録を打ち立てています。
ですがそんなスーパースターのドンチッチは、意外にも2018年ドラフトで全体3位指名だったんです。
その年の1位指名権・2位指名権を持っていたチームは、なぜドンチッチほどの逸材をスルーしてしまったのでしょうか。
今回はそんな「欧州の神童」ルカ・ドンチッチがなぜ3位指名だったのか、この機会にざっくりと解説していきます。
押さえておきたいポイント
ルカ・ドンチッチのドラフト指名について理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- ルカ・ドンチッチってどんな選手?
- ホークスから指名された?
- サンズはなぜ1位指名しなかった?
- キングスはなぜ2位指名しなかった?
- 逆になぜマーベリックスは獲得した?
ではこれらの疑問を解決できるように、ドンチッチのドラフトについて解説していきます。
ルカ・ドンチッチ
本題に入る前にまずはドンチッチについて確認します。
ドンチッチの「NBAドラフト前の経歴」や「2018年ドラフト」を改めて振り返っておきましょう。
ユーロ・リーグ時代
スロベニア出身のドンチッチは、元プロバスケットボール選手でコーチをしていた父の影響もあり幼少期からバスケットボールを始めました。
13歳でレアル・マドリードとの契約を結んだドンチッチは、様々なユース大会で結果を残し16歳でプロデビューを果たします。
その後も着実な成長を続けたドンチッチは2018年にチームをユーロリーグ優勝に導き、自身もMVPなど数々のタイトルを総ナメ。
この頃すでに世界中から注目を集める存在となっていたドンチッチは、満を持して正式に2018年NBAドラフトへのエントリーを発表しました。

これだけの実績を提げてドラフトに参加する選手は、NBAの歴史を振り返ってみてもそういません。
ではなぜそんな選手が2018年のNBAドラフトでは全体3位指名だったのでしょうか。
2018年ドラフト
この年のドラフトは今振り返ってみると良いメンバーが揃っています。
とはいってもやはり注目は、アリゾナ大のディアンドレ・エイトン、ユーロリーグMVPのルカ・ドンチッチとされていました。
ここでは改めて2018年ドラフトトップ5を確認しておきましょう。
- 1位: Deandre Ayton (PHX)
- 2位: Marvin Bagley III (SAC)
- 3位: Luka Dončić (ATL) ※
- 4位: Jaren Jackson Jr. (MEM)
- 5位: Trae Young (DAL) ※
ご覧のようにドンチッチは全体3位指名でアトランタホークスから指名されていますが、この3位指名権はダラスマーベリックスとのトレードが成立していました。
なので結果的にマーベリックスが「ルカ・ドンチッチ」を獲得して、ホークスが「トレイ・ヤングと2019年1巡目指名権」を獲得する形になっています。
ホークスがトレードしたのは何故か
トレードがあったということはアトランタホークスもドンチッチをスルーしたということになります。
一体何故このようなトレードが行われたのでしょうか?
実際この選択はホークスの球団内でもかなり意見が分かれたそうです。
ただ2018年のドラフト時点で、既にホークスは長期的な「チーム再建」に方針を転換していました。
その点から考えるとこのトレードによって有益な複数のアセットを獲得することは十分に合理的だったと言えます。
ホークスはこの時マイク・ブーデンホルザーHC時代に活躍していた選手の多くを放出していましたので、オクラホマ大のスター選手に加えて翌年の1巡目指名権が手に入るというのは非常に魅力的でした。
またデニス・シュルーダーを放出するということもあって、機動力のあるガードを探していたのも要因の一つでしょう。

以上を踏まえると、ホークスがドンチッチをトレードしたことは何となく納得できそうです。
では次に本題である1位のサンズ、2位のキングスがなぜドンチッチをスルーしたのかについて見ていきましょう。
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- ルカ・ドンチッチは16歳の若さでプロデビュー
- ユーロリーグ優勝&MVP獲得の実績を提げNBAドラフトへ
- ホークスが全体3位指名でドンチッチを指名
- マブスがトレイ・ヤング・2019年1巡目指名権と引き換えに獲得
- ホークスはチーム再建に向けて堅実な選択をした
なぜサンズは1位指名しなかったのか
まずは2018年ドラフト1位指名権を持っていたフェニックスサンズから見ていきましょう。
ここではサンズが指名した「ディアンドレ・エイトン」と「ユーロ出身選手への懸念」というポイントに注目します。
ディアンドレ・エイトン
サンズは2018年のドラフト全体1位指名でアリゾナ大学のディアンドレ・エイトンを獲得しました。

当時のサンズは再建真っ只中のチームで散々な成績となっていましたが、その甲斐もあって2018年のドラフト1位指名権を獲得。
この1位指名権はまさに球団再建の大きなチャンスですので、即戦力かつ長期的な活躍が見込めるタレントを求めていたわけです。
エイトンは216cmという長身に加えて大学時代から既に優れたフィジカルと運動能力が備わっており、NBAに入っても十分に即戦力であると評価されていました。
さらに以前からサンズのオーナーがエイトンをプッシュしていたことや、「ユーロリーグ出身のドンチッチがNBAで通用するのか」という懸念を踏まえると球団がエイトンを指名するのは自然な選択だったのかもしれません。
ユーロリーグ出身選手への懸念
「ユーロリーグ出身のドンチッチがNBAで通用するのか」という言葉が出てきました。
これはサンズに限ったことではなく、他のチームでも少なからずそういった考えがあったと言われています。
例年ドラフト上位指名はNCAA出身の選手が多く、ユーロリーグ出身の選手に対しては以前から一定の懸念が持たれてきました。
よく言われるのが「NBAでのフィジカルコンタクトに対応できるのか」「3Pラインが遠くなるのでシュート確率が落ちるのではないか」などの点。
さらにドンチッチの場合「ポイントガードとして動きが重いのでは」「これ以上の伸びしろがあるのか」といった疑問も持たれていました。
実際ユーロリーグ出身のスター選手がNBAで活躍できないという前例もありましたし、特に19歳という若さで既にユーロリーグ経験が長かったドンチッチに対してはそういった懸念が持たれてたわけです。
結果から見ればドンチッチはそのユーロリーグで培ったバスケットボールIQで相手ディフェンスやコート状況を掌握し、ベテランポイントガードのように多彩なオフェンスを演出しています。
弱点だと考えられていた彼の重さはハーフコートオフェンスで最大の武器となり、懸念されていたNBAの3Pレンジにも難なく対応しました。
スロベニア代表チームコーチであるイゴール・ココスコフが当時サンズの新HCになっていたにもかかわらずドンチッチをスルーしたというのは、現在になって振り返ってみると大きなミスだったのかもしれません。
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なぜキングスは2位指名しなかったのか
続いては2位指名権を持っていたサクラメントキングスを見てみましょう。
キングスが指名した「マービン・バグリー3世」と「ブラデ・ディバッツGM」に注目して解説していきます。
マービン・バグリー3世
キングスは2018年のドラフト全体2位指名でデューク大学のマービン・バグリー3世を獲得しました。

キングスとしては2010年ドラフトで獲得したデマーカス・カズンズ以来の上位指名だったこともあり、当初はドンチッチとバグリー3世でかなり迷っていたようです。
しかしチームの要として獲得していたウィリー・コーリースタインやスカル・ラビシエが思ったほどの成績を残せていないという現状も考慮し、オールラウンダーなビッグマンとして評価の高かったバグリー3世に狙いを定めていったとのこと。
さらにこの時期のキングスでは既に、ディアロン・フォックスやバディー・ヒールドというバックコートコンビがチームの中心として活躍し始めていたという要因もありました。
ここにドンチッチが加わってボールコントロールするとフォックスらの良さが機能しなくなるのではないか、そういった懸念がバグリー3世獲得に繋がったとディバッツGMは語っています。
ブラデ・ディバッツとルカの父
キングスは上記のようなフォックスとドンチッチの組み合わせに対する懸念から、バグリー3世獲得に至ったとしています。
ですが最近になって別の理由があったのではないかと思わせる噂が出てきました。
キングスがドンチッチを指名しなかったのは「ブラデ・ディバッツGMがドンチッチの父親をよく知っていたから。なのでドンチッチについてあまり考慮することもなかった。そんな彼らの決定が尊重された。」みたいな話。
要するにこのディバッツGMが何らかの個人的な理由や印象でドンチッチをスルーしたのではないかということです。
当然キングス側は否定するでしょうから真偽は確かめようがありません。
こういった噂が出るということ自体、ドンチッチの飛躍的な活躍を世界中が認めているという証拠とも言えます。
実際キングスのデビッド・イェガー元HCも「ドンチッチの可能性を見誤っていたし、キングスにとって残念な結果だ」とドラフトの失敗を一部認める発言をして話題となりました。
ただドンチッチがNBA2年目という段階で見せているこれだけの飛躍は、正直なところ統計やスカウティングの範疇を超えているレベルです。
2年目という段階でバグリー3世の実力を軽視すべきでもありませんし、今後の活躍次第ではイェガーHCの発言自体が失敗だったと言える日が来るかもしれません。
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- キングスはマービン・バグリー3世を2位指名
- バグレーはオールラウンダーとして高評価
- ドンチッチはフォックスとの組み合わせに難ありという懸念
- ディバッツGMがドンチッチをスルーさせたという噂も
なぜマーベリックスは獲得したか
ここまで各チームがドンチッチを獲得しなかった理由について見てきましたが、逆になぜマーベリックスはそのドンチッチを翌年のドラフト1巡目指名権を手放してまで獲得したのでしょうか?
マーベリックスの決断について「マーベリックスという球団」や「ダーク・ノヴィツキー」というポイントから解説していきます。
マーベリックスという球団
ドンチッチはユーロリーグで既にスーパースターとなっていたものの、先述の通りNBAという舞台で活躍できるかが疑問視されていました。
ですがマーベリックスのリック・カーライルHC曰く「2018年ドラフトのNo.1は間違いなくルカだと1年以上前から確信していた」とのこと。
ヨーロッパでのスカウトに定評のあるトニー・ロンゾーネの意見を参考に、ドニー・ネルソンGMはドンチッチがNBAで活躍することに確信を持っていました。
そしてそんなドンチッチという才能豊かな選手の能力を存分に引き出せるカーライルHCがいます。
さらにヨーロッパ出身選手の獲得を語る上で欠かせないのが、ダーク・ノヴィツキーの存在です。
ダーク・ノヴィツキー
「ヨーロッパ出身選手がNBAで成功するのか」という懸念に対して、マブスは絶対的な答えを持っています。
それがダーク・ノヴィツキーというレジェンドの存在です。
ノヴィツキーがNBAデビューした頃と現在とでは状況が全く違いますが、最も成功したヨーロッパ出身選手を育て上げた球団がマーベリックスであることに疑いの余地はありません。
そんなレジェンドの存在もドンチッチの獲得を後押しする要因だったと言われています。
結局のところドンチッチはどのチームに入っても十分に活躍していたでしょう。
ですが奇しくもノヴィツキーが引退する2018年にヨーロッパ出身のドンチッチがマーベリックスに入団したというシナリオは、いちNBAファンからすると何とも胸躍る展開だったと改めて感じます。
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- マブス陣営はドンチッチがNo.1だと確信していた
- ノヴィツキーという存在もドンチッチ獲得の一因に
まとめ
今回は2018年のドラフトをルカ・ドンチッチの指名というポイントで振りました。
ドラフトの成功・失敗は判断するタイミング次第で180度変わりますのでナンセンスだとは思いますが、ドンチッチがあまりにも凄いのでこんな記事を書きたくなってしまいました。
それではここで改めて今回解説した内容をおさらいしておきましょう。
- ルカ・ドンチッチは16歳の若さでプロデビュー
- ユーロリーグ優勝&MVP獲得の実績を提げNBAドラフトへ
- ホークスが全体3位指名でドンチッチを指名
- マブスがトレイ・ヤング・2019年1巡目指名権と引き換えに獲得
- ホークスはチーム再建に向けて堅実な選択をした
- サンズはディアンドレ・エイトンを1位指名
- ユーロリーグ出身のドンチッチに対しては少し懸念も
- キングスはマービン・バグリー3世を2位指名
- ディバッツGMがドンチッチをスルーさせたという噂も
- ノヴィツキーという存在もドンチッチ獲得の一因に
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。