NBAは世界を代表するバスケットボール選手たちの集まりですので、毎年のように将来有望な若手選手がリーグに登場してきます。
チームに若手選手が入ってくるということはその分誰かがチームから追いやられているというわけです。
そんな過酷なNBAにおいてよく耳にする"ウェイブ"という言葉を何となく聞き流しているという人も多いのではないでしょうか?
今回はそんなウェイブについて解説していきたいと思います。
「用語で解るNBA」とは
このブログは知識0からNBAが解るということをテーマにしています。
「用語で解るNBA」では単に用語の意味を知るだけでなく、その用語を通じてNBAを理解していくことが目的です。
この記事では"ウェイブ"という用語を詳細にではなくざっくり解説します。
その中でもテーマや図解を交えることで納得してNBAを理解できるようになっています。
押さえておきたいポイント
"ウェイブ"を理解するために押さえておきたいポイントはざっくりとこんな感じです。
- ウェイブって何?
- ウェイブされた選手はその後どうなる?
- ウェイバーって?
- 選手の契約やサラリーはウェイブ後どうなる?
- "ストレッチ条項"とか"セットオフ"って何?
ではこれらの疑問をしっかりと解決できるように、"ウェイブ"について説明していきます。
ウェイブとは
まずはウェイブというものを基本から確認していきましょう。
ここでは「ウェイブとは一体どんなものか」と「ウェイブはどのような流れで実施されるのか」という点に注目して解説していきます。
ウェイブ
ウェイブ(waive)はNBAにおいて「解雇」という意味で用いられます。
つまり「選手をウェイブする」と言った場合には「現行の契約を打ち切って選手を解雇する」ということなんです。
このウェイブはあくまで「解雇」ですので、基本的には「チーム側から一方的に契約を打ち切ることができる仕組み」だということも頭の片隅に入れておいてください。
一連のプロセス
ウェイブには一連のプロセスが定められていますので、その流れを確認しておきましょう。
①まずチームが選手をウェイブすることによりこのプロセスがスタートします。
②ウェイブされた選手はそこから48時間の「ウェイバー」という状態になります。
ウェイバー状態の選手に対して他のチームは現行の契約を引き継ぐというオファーを出すことができます。
③どのチームからも引き継ぎのオファーが無いまま48時間が経過した場合、その選手はFAになります。
これを「ウェイバーをクリアした」 と言います。
このように選手はチームから解雇された場合でも、その契約を他のチームが引き継いでくれるという仕組みもあるんです。
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- ウェイブは解雇という意味で用いられる
- ウェイブされた選手は48時間のウェイバー状態になる
- 他のチームは契約を引き継ぐことができる
- ウェイバーをクリアした選手はFAになる
それぞれの視点で見るウェイブ
もう少しウェイブというものを理解するために、ここからは「ウェイブされた選手」「ウェイブした元所属チーム」「契約を引き継いだ他のチーム」の3つの視点から見ていきましょう。
ウェイブされた選手
先ほど確認した様にウェイバーをクリアした選手はFAとなり、どのチームとでも自由に契約をすることができます。
ですがシーズン中の3/1以降にウェイブされた選手は他のチームとの契約に至った場合でもそのシーズンのプレーオフロスターに入ることができませんので、ウェイブがいつ行われたのかにも注目です。
ちなみにバード権を持った選手がウェイブされたらどうなるのでしょう。
実は他のチームがその契約を引き継いだ場合でもバード権はアーリー・バード権に格下げになります。
これは少し細かい内容ですので基本的にはスルーしてもらって大丈夫です。*1
興味がある方はこちらの記事も合わせてご覧下さい。
ウェイブした元所属チーム
選手をウェイブした際、その選手のロスタースポットは即座に別の選手が利用できるようになります。
つまりウェイバーをクリアするまで待つことなく、ウェイブ後すぐに新たな選手を獲得できるということです。
逆に言うと一度ウェイブのプロセスが始まってしまった選手には、ウェイバー状態を撤回したりはできないということでもあります。
契約を引き継いだ他のチーム
ウェイバー状態の選手に対して現行の契約を引き継ぐオファーが出せるのは、チームが以下のいずれかに当てはまる場合です。
要するに残っているサラリー分の「キャップスペースに空きがある場合」か「例外条項が適用できる場合」には契約を引き継いでもいいということ。 *3
もし複数のチームからオファーがあった場合には、その中で一番勝率が低いチームに獲得する権利があります。
実際にはこのように契約を引き継ぐことよりも、ウェイバーをクリアしたFA選手と契約することの方が多いです。
選手は解雇されている立場ということもあり、他のチームからすると大抵の場合「現行の契約よりも小さな契約」を提示しても契約できるわけです。
さらに言うと、元所属チームとの契約には様々な保証やボーナスなども規定されていますので、それをわざわざ引き継ぐのではなく新たに契約を結び直したいというのも理解できます。
保証などついては次の項でもう少し詳しく見ていきましょう。
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ウェイブとサラリー
先ほど少し触れましたがウェイブされた選手の契約には保証サラリーが含まれていることもあります。
ウェイブされた選手が結んでいた契約はその後どのように影響していくのかを確認していきましょう。
保証サラリー
ここでは「ウェイバー状態から他のチームに契約が引き継がれた場合」と「ウェイバーをクリアしてFAになった場合」におけるサラリーやサラリーキャップへの影響を見ていきます。
⑴他のチームに契約が引き継がれた場合
先ほどから紹介している通り、この場合はオファーを出したチームに現行の契約がそのまま引き継がれます。
- サラリー:残っている契約のサラリーを移籍先のチームが支払う
- サラリーキャップ:残っているサラリー分が移籍先のチームサラリーに計上される
つまり元所属チームはその選手に対する保証やサラリーなどの責任から免除されるということですね。
⑵ウェイバーをクリアしてFAになった場合
ウェイバーをクリアした選手はFAとなりそれまでの契約は打ち切られます。
ですが契約の中に保証サラリーが含まれている場合はその後にも影響していくんです。
ですのチームとしてはウェイブ後に在籍していない選手のサラリーを支払っているとも言えます。
これに加えて新たに獲得した選手のサラリーを支払うとなると、チームにとってはかなりの負担となってくるわけです。
チームがそのような事態に対応するために「ストレッチ条項」や「セットオフ」というルールが設けられていますので、次にそれらも確認しておきましょう。
ストレッチ条項
ウェイブした選手に支払う保証サラリーが$25,000を超える場合、契約で定められたスケジュールよりも期間を延長し分割で支払うことが認められています。
これがいわゆる"ストレッチ条項"と呼ばれるもので、延長できる期間は以下の通りです。
支払い期間 =「残っている契約年数」 × 2 +1
例えば「残っている契約年数1年」「保証サラリー$6Million」という契約の選手をウェイブした場合には、保証サラリーを「3年間(=1×2+1)に$2millionずつ」支払うようにストレッチできるというわけなんです。
サラリーの支払いだけでなくチームサラリーに関しても、このように保証サラリーをストレッチして計上させることができるということも押さえておきましょう。*5
セットオフ
ストレッチ条項は保証サラリーを分割して支払うことができるという制度でした。
それに加えて、ウェイブされた選手がFAになり新たなチームと契約した場合には保証サラリーそのものを減額できる"セットオフ"(相殺)という制度もあります。*6
セットオフできる金額は以下のように決められます。
相殺額 =(「新チームでのサラリー」-「ミニマムサラリー」)÷ 2 *7
例えばウェイブした選手の「新チームでのサラリー$2Million」で「NBA在籍年数5年」という場合には「$343,694」が保証サラリーから相殺できるということです。
ちなみにこのセットオフをストレッチ条項と組み合わせることもできます。
その場合には本来残っていた契約期間の分だけが相殺されます。
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- 保証サラリーは元所属チームが支払う
- 保証サラリーは元所属チームのチームサラリーに残る
- 他のチームが契約を引き継いだ場合にはそれらを免除
- ストレッチ条項で保証サラリーを分割できる
- 新チームと契約した選手の保証サラリーはセットオフできる
まとめ
今回は"ウェイブ"について解説しました。色々な用語が登場しましたが理解できましたでしょうか?
NBAではシーズン序盤から終盤までこのウェイブという言葉を度々耳にすることになりますので、その際にはこの記事を役立てていただけると幸いです。
それではここで改めて今回解説した内容をおさらいしておきましょう。
- ウェイブは解雇という意味で用いられる
- ウェイブされた選手は48時間のウェイバー状態になる
- 他のチームは契約を引き継ぐことができる
- ウェイバーをクリアした選手はFAになる
- 保証サラリーは元所属チームが支払う
- ストレッチ条項で保証サラリーを分割できる
- 新チームと契約した選手の保証サラリーはセットオフできる
最後に
「用語で解るNBA」というカテゴリーでは他にもNBAの解説を投稿していますので是非覗いてみてください。